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 神殿を出て一息つき、しかし早くフィッツガルドへ向かわねばとバルックのオフィスへ向かう。
 彼は部下とやり取りをしていたが、リオンたちが来たことに気づくとこちらへ向き直った。


「あまり無茶はしてほしくなかったな。私がヒューゴ総帥に怒られてしまう」
「結局はグレバムの行き先もわかったんだ、これで良かっただろう」
「はは、まあ結果オーライというやつか。しかしカリナもいるのだから気を付けてやってくれ」
「そんなの、言われなくたって…」
「でも、カリナがいてくれて助かったよ!あのソーサラーなんとかって道具とか」
「お役に立てたなら良かったです」


 スタンの言葉にカリナは軽く会釈をする。
 その声音からはもうあの時のような雰囲気は感じない。


「でも、カリナ。戦えないのにあんな挑発するみたいなのやめなさいよね」
「挑発?」
「あの神官に言ってたじゃない。愚か者!とか」
「へえ、カリナが?それは珍しいことがあったものだ」


 顎をさすって興味深げにカリナを見るバルック。それにつられて他のメンバーも彼女に視線を集めた。


「…カルバレイスの民を侮辱されたから」
「ああ、なるほど。カリナはカルバレイスにいたことがあるって言ってたもんな」
「へえ?そうだったの。でもあたしスカッとしちゃった。すましたお嬢様だと思ってたけど、案外言うのね」
「私は、そんな…」
「お嬢様、か。ヒューゴ様は身内だとて容赦などしない方だからな。どちらかというとカリナは"叩き上げ"だな」
「ふうん…」


 ちらちら、とルーティがカリナを窺っている。
 その眼差しにはいつものような剣呑な光はなく、むしろ好奇心を抱くような明るいものが宿っていた。急にどういう心境の変化なのだろうか。
 内心穏やかでないながら二人の間の空気を見極めようとしたが、それは船の準備ができたという知らせに阻まれた。


「お世話になりました、バルック殿」
「はは、大して何もできなかったがな。また会おう」
「バルックさん、ありがとうございました!」


 それぞれ挨拶を交わして港へ向かう。
 海に近付くにつれ、熱風が潮の香りを運んでジトリと肌を撫でていく。到底快適とは言えないような その国の海岸線を、カリナはいつまでも眺めていた。
 もちろん表情はマスクに隠れて見えないが、その横顔はどことなく悲しそうに見えた。






2016.12.27投稿
2017.11.19改稿


 
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