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 アクアヴェイルは王権国家ではない。島々からなる連合国家であり、三つの領主家が分割統治しているのだという。その中の一つ、シデン領の街並みは独特の雰囲気をまとっていた。
 鎖国体制を敷くアクアヴェイルには他国とまったく違う文化が根付いている。スタンたちは物珍しそうに辺りを見まわしているが、同じくらいに現地の者もこちらを興味津々に見ていた。
 しかしその目に警戒や嫌悪といったものは感じない。


「…なんだか平和そうじゃない?」
「皆さん、普通に過ごされているようですわね」
「まさか、アテが外れたとか?」


 皆で首を捻るも、ティアラについている発信器はやはりアクアヴェイルを指している。
 どういうことか?情報を得るために、ひとまず他の領の状況も探ってみようと港へ行ってみることにした。


「あら、あんたたち船に乗るのかい?」


 港へ向かう途中、老婦人に声をかけられた。
 足早にシデン領を過ぎ去ろうとした一行を不審に思ったのだろうか?そう思い話を聞くと、他の領が大変な混乱に陥っているので船に乗ろうとしている一行に話しかけたらしい。


「バティスタだって!?」
「そうそう、そんな奴が新領主になって、モリュウはめちゃくちゃになったらしいよ」
「新…領主!?以前から治めていらした方は、どうなって…」


 
 そこまでは知らないけどねえ、と顔に手を当てて首を傾げる老婦人。思いがけないところで情報を得られたが、肝心のモリュウ行きの船も止まっているらしい。
 それでも交渉するべきと港へ向かうも、船員たちはノーと言うばかり。ルーティが喧嘩を売る前に船から離れた。


「まいったな…居場所はわかるのに足がないなんて」
「こう…船だけ借りてアトワイトの力でどうにかできないかしら!」
『ルーティ…。やってみてもいいけれど、きっとあなたが途中で倒れるわよ』
「おや…旅の方とお見受けするが、モリュウへ行きたいのかね?」


 港の端で賑やかにしていると(主にスタンとルーティが、だ)物腰の穏やかそうな老人がそれを聞き付けたらしい。風貌に似合わず鋭い眼光で訊ねてきた。


「バティスタを追って来たとのう」
「はいっ!あいつを早く止めないと、モリュウが大変だって聞きました」
「それなのに船乗りの連中、モンスターが怖いとか言って船を出さないのよ!男のくせに情けないったら!」
「ほっほ、勇ましいお嬢さんだ」


 その態度が気に入ったのか、老人は自分のことを話し出した。
 曰く、自分は昔シデン家に仕えていて、そこの息子とよく近くの洞窟を探検したのだと。その洞窟は海底で繋がるモリュウへの通路があるのだと。


「その洞窟はどこにある?」
「街から南へ行くと、海岸近くに入り口があったはずじゃ。今の時期は下げ潮じゃから水没しとることもなかろうて」


 その話を聞いて皆の顔に光が戻った。口々に老人に感謝の言葉を述べ、早速その洞窟へと向かう。

 スタンやルーティが明け透けにまわりもはばからず会話をするのを、少し疎ましく感じていたのに。今回ばかりはそれに助けられてしまった。それをなんだか悔しく感じた。
 彼らは真っ直ぐだ。
 自分がそれに劣るとも思わないが、足りないものを見せつけられている気がする。
 けれど彼らのように生きるには、今さらどうしようもないのだ。
 色々なものに縛り付けられたリオンには、それを憧憬の目で見ることしかできない。遠いものだ。







2017.02.21投稿


 
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