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 連戦に次ぐ連戦を乗り越えて、ハイデルベルグ城の最上階の扉を開く。
 熱気のこもっていた城内に雪国の寒気が吹き込んだ。頬を切り裂くような、冴え冴えとした冷たさが曇った思考を覚まさせる。
 寒霧に煙る時計塔の屋上には、少しの人と巨大な塊の影。長い旅路を追って来たものたちがその場に存在している。
 視界のままならない中においても、"それ"は美しいまでの威圧感を放っていた。疑いようもなく、あれが――神の眼。


「グレバム!」


 フィリアが感情の入り混じった声で叫ぶ。かつての同志の名を呼んだだけで、もう何を言っていいのか、唇をひき結んで瞳を潤ませた。
 そんな彼女をグレバムは嘲笑い、視線を外す。
 

「よくぞここまで来た。と言いたいところだが…残念だったな、貴様らの命運もここまでだ」
「それはお前だ、グレバム!今度こそ終わらせる!」
「ああ。わが父の仇、取らせてもらう」


 スタンとウッドロウが一歩前へ出る。
 二人とも剣を構えて、闘気を滾らせている。この戦いにかける想いを抑えきれないようだ。
 しかしそんな意志を向けられても、グレバムは余裕の姿勢を崩さない。


「これはウッドロウ殿下!先日無様に逃げ延びたと思いきや、かように早くまたお会いできるとは」
「…そのような低俗な挑発に揺れるほど、未熟な心は持ち合わせておらんよ。ファンダリア王家の名にかけて、今こそ全ての決着をつける」


 涼しげな表情のまま、彼は瞳だけを熱く燃え立たせた。
 ウッドロウの堂々とした背に勇気づけられたのか、フィリアもクレメンテを握りしめて叫ぶ。
 

「私も…っ!グレバムのこれまでの行いを、神殿の者として許すわけにはまいりません。これ以上、あなたの好きにはさせませんわ!」
「おとなしく石になっていればいいものを…むざむざ殺されに来たか」
「いいえ、私は負けません!」


 知っている少女とは違う、強い意志にグレバムは目を見張る。フィリアは視線をそらさず、二人の間にしばし沈黙がおりた。
 ぴりりとはしった緊張感は、一呼吸のちにグレバムが剣を掲げたことで打ち破られる。


「ふむ。ならばこの剣で、貴様ら全員、返り討ちにしてくれよう」


 刃渡りの長い、スラリとした剣が音をたてて辺りを薙いだ。
 それを見るやウッドロウの顔色が変わる。


『あれは…イクティノス!』
『みんな、俺に構うな。さっさとグレバムを倒せ!』
「くっ…イクティノスを、よくも!」
「ふっふっふ、お気に召したかな?この剣を以って神の眼の威力を思い知らせてやろう!」


 かくして決戦の火蓋は落とされた。
 リオンはうねる吹雪の音を感じながら、シャルティエの冷たい柄を握り直した。







2017.07.30投稿


 
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