地上軍に連れられて彼らに護られ通路を進む。
 ダイクロフトからの脱出には天上軍のポッドを使うらしく、ならばとマナが操作をしようとすれば、先ほど迫ってきた女性に押しのけられた。


「はい、どいたどいた!帰りも着陸場所がわからないように飛ぶから、ちゃんと掴まってなさいよ」
「えっ。またあんなめちゃくちゃにですか?」
「そうよ。念のため基地から離れたところに着陸するから、飛んでる時に怪我なんてしないでよね」
「うう…」


 顔を曇らせる、おそらく地上軍の中でも若手であろう青年の様子に、マナは首を傾げた。乗員に怪我をさせかねないほど悪条件の飛行だったのだろうか?
 そんな目線に気付いたのか、その青年は慌てて弁解をするように手を振った。


「あっ、ぼ、僕はあの飛び方が怖いとか思っていませんよ!ただ、帰りは非戦闘員の方も一緒ですし、その…」
「そうだな。基地から離れたところに着陸するのならば、負傷した者がいると護衛も大変になってしまう」
「もう!兄貴もシャルティエもうるさいわね!何度も言うけど、ちゃんと最小限の怪我で済むように飛ぶから安心しなさいって」
「怪我はすることが前提なのか?」
「着地点と基地の場所が知られても〜、情報将校サマが何とかしてくれるって言うなら構わないけど?」
「お喋りはそこまでにしないか!ハロルド、早く脱出準備を進めてくれ」
「もうできてるわよ」


 ハロルドと呼ばれた少女の手先をじっと見つめていたマナには、それらが止まることも迷うこともなく操作盤を動きまわるのが見えていた。地上軍の彼女が、だ。
 だが、天上軍の情報が流出したりしたのではないのだろう。ポツンと離れた場所にあるボタンに彼女は触れなかった。


「そのボタンを押してください。飛行時の衝撃を軽減するものです」
「あら、わざと押さなかったのに。言っちゃったのね」
「ハロルド博士!?」


 それが彼女のハッタリなのかどうかはマナにはわからなかった。しかしとにかくこの人物は読めないものだと、心に刻んだのだった。








2016.03.16投稿


 
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