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ハートの海賊団は誰彼構わず喧嘩を売るタイプではない。
ついでにいうと一般人からの強奪だとかもべつにしない。
ただでさえ海軍に狙われる側だというのに、海賊のなかでも悪質判定されて余計にしつこく追われては面倒臭いというのが理由のうちの殆どを占めている。
だが相手が売ってくるようなら積極的に買う。
わざわざ向こうから襲ってくるまで待つような大義名分は必要としていないので、アドリアーナやベポが「あ、これ敵意あるやつだな」と判定すると途端に海上だろうとも戦場と化す。持つべきは耳の良いクルーかもしれない。
「あ、飛んできた」
さっきから何か見えてるなァ、こっち近づいてきてるなァ……と思った船は海賊船で、それから敵意がありそうだなと思ってアドリアーナとベポが見ていたら予告もなしに砲弾が飛んできた。
その砲弾をアドリアーナは魔法で勢いを殺し、宙に浮かべた。命中した衝撃で爆発するようなものでなければキャッチしてしまえば怖くないのである。
しかしせっかく砲弾をもらっても生憎とポーラータング号に大砲の装備はない。
「一応聞くけどこれいらないわよね?」
「いらねェ」
じゃあ浮かせてても邪魔だな、と思ってアドリアーナは相手方の船のほうへ投げ返した。
遠隔攻撃を得意とするアドリアーナにとって、こういった海上戦はかなりの得意分野である。特化していると言ってもいい。
箒で飛んで、距離を取って相手方に遠隔からものを投げつける。あるいは浮かばせて翻弄する。
でもそれだとアドリアーナばっかりが活躍してしまうので。
「アドリアーナあの船沈めるんじゃねェぞ! おれたちも行きたいんだからな!?」
「そうだぞー!」
「エンジン全開ー! アドリアーナが沈める前に行くぞォー!」
「べつにそういうことなら沈めやしないわよ……」
こういうときは結構好戦的な人たちなのだ。アドリアーナはべつにそうでもないので、苦笑して大人しく砲弾を受け止めるだけに留める。
帆の向きをいじってエンジンを動かしてまで敵船へ寄ろうとする仲間のために、アドリアーナは面倒臭いあの砲台を土台の下、木造の部分から浮かせて壊した。
「見聞色の訓練がてら見てるからあとで答え合わせねー」
「おれが一番倒すからな! 数えてろよ!」
「はァー? おれがやるんだよ!」
途端に賑やかになる甲板のなかで「“ROOM"」という低い声がクルーたちをしんと静かにさせた。
徐々に近付きつつあった距離のぶんを青薄い膜が覆う。鬼哭を鞘から抜いていたその人がにやりと笑った。
「悪いな。ぜんぶおれが貰う——“シャンブルズ”」
ローがいたはずの場所に拳銃が現れる。誰かが持っていたものと入れ替わったらしい。
それがごとっと転がって音を立てた数拍後、ブーイングが響き渡る。
「キャプテンずるいー!」
「フライングだ!」
「レギュレーション違反!!」
「はーいキャプテンの勝ちー」
また一度向こうでキャプテンがROOMを展開したのが見える。そしてばっさりと薙ぎ払った気配がしたのでアドリアーナが宣言すると「おかしいだろ審判!」「判定! やり直し!」「もっかい!」とアドリアーナへもブーイングが入った。
そもそもレギュレーションなんてないだろうに。やったもの勝ちである。
しかし、とアドリアーナは箒に乗って敵船でひとり暴れ倒しているローのもとへ近付いた。
「キャプテン、わたし乱戦で見たかったのだけど」
「しらねェよ。だが、そうだな……“シャンブルズ”」
くるっと手のひらを返した途端に散らばっていたバラバラの体があちこち入れ替わる。ローのオペオペの実は直接的に殺傷力のある能力ではないので、ROOMのなかで単に切られたところでバラけるだけで生きてはいた。
「同一人物のパーツを当ててみろ。……なんだその顔は」
「…………いえ、ヤバいなこの人って思ってるとこ」
それでもほかのクルーたちが船を寄せた頃には「船首右側に斜めに入った左半身、右後ろ大砲跡に残りの右半身」「当たり」なんてパーツの位置当てゲームをしていたので彼女も大概ではあるのだが。
だから死の外科医とか言われるのだ。
とにかく文句を言ってやろうと乗り込んできたペンギンたちはドン引きするにはしたが、彼の能力には慣れていたのですぐに適応して正解した端からくっ付けて縛り上げてやるなどしていた。 prev|next [
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