狭き青

高虎は、#なまえ#に対しての気持ちがどうしても堪えきれぬ時がある。

それは、感情を無闇矢鱈に表に出さぬことを美学とする忍の彼女が、城下の童をみて寂しそうに微笑むとき。それは、任務で付いた傷を当たり前のように独りで静かに処置をしているとき。それは──

理由を付けてなまえへ贈り物をした。忍と言えど、なまえも年頃である。恥を忍んで侍女に城下の流行りを聞いては、やれ「城下の見回りの次いでだ」だとか、「これは日頃の働きの功として受け取れ」だと言い、女子(おなご)の好きそうなものを手渡していた。

普通であれば、勘のいい者はその好意に気付くであろう。しかし、高虎はその愛想の無さ、加えて律義さ故に、情報を提供した侍女にも同様の品を手渡すなどしたため、なまえにその思いが伝わるどころか、残念なことに彼女からの評価は"酷く部下思い、しかし無自覚な女たらし"である。

詰まるところ、高虎はなまえが自分の贈り物を口にしたり、身に付けたりする様子を見たことがないのだ。



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