衣替え
サリアと別れ、若干ぼろぼろになったリンクに苦笑いしながら一緒に家へと帰る。
自分の体重で梯子が折れないかとおどおどしたが、見た目と違いしっかりとした丈夫な細木で作られていたので安心して登ることができた。
巨大な木をくり抜いた不思議なお家。少し屈んで中へとお邪魔する。
中の壁に触れれば柔らそうな木で、これなら子どもの力でも十分に道具でくり抜けそうだ。
デクの樹がそういう風に作り出しているのか分からないがそこはファンタジーで片付けられるところだろう。
特にリンクに聞かずにしておいた。
そして今日の寝床についての問題でようやく二人で気付いたのだ。
「そっか、姉ちゃんの寝る所どうしようか……」
『濃いイベントが立て続けに起きて思いっきり忘れてたね……』
リンクの家にはベッドが一つ。
もちろんそれはリンクのものなので十分に寝れるが自分には狭くて寝れない小ささだ。
別に平たいとこなら何処でもいいけどと言ったらリンクの中で閃いたようだ。
リンクとともにコキリの森のお裁縫所と言われてるらしい双子姉妹がいる家を訪ねた。
そんな子達がいたのか。
前髪の分け目が左右対称な姉妹がテーブルに頬杖をつきながらこちらに手を振ってくる。
「いらっしゃい、あたしはリチェ」
「あたしはリカ」
「ミドと違って私たちは歓迎してるよ。で、あらかた寝る毛布が無い、てところかな?」
『そ、そうなんだけど……』
リチェが言わずとも来た理由を言い当てた。
エスパーか、いや今の時間帯ここへくることはそれ以外ないだろう。
言葉が途切れるほど部屋の中が凄かった。
何かの毛皮らしきものや麻のような荒い布など、様々な色の布が無造作に所狭しとあるのだ。
何処から調達したのだろうか……これも外へ落ちていたものなのだろうか。
「そうだなぁ」
「お姉さんがあたしたちのお願い聞いてくれるならタダであげる」
お願いかぁ……、外に出してとかは無理だけど。それに頷くと双子はにんまりとした顔だった。
なんだろう、みんな可愛い女の子ばかりなのに寒気がする笑顔しか見てない気がする。
「「じゃあちょっとこっちに!」」
ニッコリと笑った後、悪魔の笑みを垣間見たような気がして反射で逃げようと思ったら、
「「………」」ガシッ
『…………』
逃げられず二人に両手を引っ張られていく。
その先は少しヒビの入った鏡がある空間で誰のものかも分からない衣服もあった。
それもしかして魔物にされたハイラル人の……いやなんでもない。
「リンクは外で待っててね」
「え、」
「さぁお姉さんこっち来て!」
『え、ちょっ、ま……』
〜10分経過〜
『…………』
「(わぁ……、凄い魂の抜けた顔……)」
「お姉さん楽しみにしててね」
「明日には渡すから♪」
何があったかというと脱がされそうになった揚げ句、色々と何かを測られた。
下手したら下着まで脱がされかけた。
一体何をしたんだろうか。
どうみても服のサイズしかないんだけれど、まさか彼女たちが作るのだろうか?
一晩で?でも一番のお裁縫所とまで言われてるならあり得ない話でもない。
「ハイ毛布。大きめだから余裕だヨ」
「ただでかく作りすぎたんだけどね」
渡された毛布は二人余裕に入りそうな位大きい物だった。
ソレとそれより小さめの毛布。
これで寝床は確保できた。この世界でのお金……ルピーもないのに毛布までくれ、さらに衣服まで作ってくれるとは思ってもみなかったことだ。今着ているパーカーもここではどうしても浮くからとても嬉しいことだ。
『これだけでも嬉しいのに……ありがとうね』
「「こちらこそお姉さん」」
……ちょっと双子が苦手になりかけたが、タダより高いものはないのだ。
含みのある笑みがなんとなくこわい。
双子は何でハモる確率が高いんだろうか……。
大荷物を抱えてよろよろと道を歩く。
リンクが持つよと言ってくれたが流石に大きくて小さなリンクが持つと目の前が遮られてしまうだろうと思い断ったが、途中泥に落っことしかけたので二人で協力して持っていくことにした。
非力で申し訳ない……。
さて、……これで、どうやって梯子を登ろいか。
* * *
その後どうやって毛布を梯子の必要なリンクの家へ持っていこうと考えていたら、リンクがロープ(蔓らしきもの)を持ってきてそれを毛布に巻き付けて上に引っ張り上げた。
これで自分は寝れる。リンクは色んな所で機転が利くなぁ……尊敬する。
夕飯は日干ししてあった木の実などを食べた。
見た目は……強いていうなら、椰子の実みたいなもので味は干してあるのもあってか甘みが強い。
魚とかの肉は食べるのかと聞いたら魚は食べるが森の深いところにある泉にしか生息しておらず、危ないから基本取らないとリンクは話していた。
それにデクの樹の周りは果樹やきのこ類が沢山あるからわざわざ危険を冒さなくとも腹を膨らませることができるからしないらしい。
コキリ族の食生活の謎が一つ解明された。
けれど結局はもっと美味しくなるものも干すくらいしか加工しないのでそのままだった。
私は料理ができないからあまり力になれない……。
こういう時自分の無知さを恥じて頭を俯かせるしかない、それが嫌なのになぁ……。
少し物足りない感じもしたが不思議と腹を膨らませることができた。これもデクの樹のおかげなのだろうか、いまいち謎だ。
いろいろあって疲れたからか、それとも道路よりも真っ暗な環境のおかげか眠気がすぐにやってくる。
目の前でのんびりとしたあくびが聞こえた。
『ごめん……ちょっと眠いかも……』
「オレも……。もうみんな寝てる時間なんだぁ」
『道理で虫の音しかしないわけなんだね……付き合ってくれてありがとう』
「んん、だってお姉ちゃん今日帰れなくなっちゃったんでしょ?それにだれかと一緒に寝るってこんなにわくわくするんだって思ったし」
『お泊まり会ってここではしないの?』
「お泊まり?みんなしないよ、だいたいが一人で寝るのが普通だから」
『へぇ……そうなんだ』
幼い頃やった幼稚園のお泊り会を思い出した。
その頃は訳もわからずにされるがままに泊まっただけだから本能のままにぐっすり眠っていたので特に感想はなかった。
でも朝に食べたサンドイッチは美味しかった記憶がある。
それを友人に話したら「あり得ない」とだけ言われた。
まぁ、とにかく自分は寝れる場所さえあればどこでも寝れるのでリンクの寝息が聞こえるかくらいで意識が無くなっていた。
* * *
気がついたら朝になっていて鳥のさえずりが聞こえて目を覚ました。
そういえばお風呂に入らないまま寝ていたから髪の毛はぐちゃぐちゃになっていた。どこかで水浴びだけでも出来るといいなぁと思いながらリンクが先に起きて採りに行ってくれたみずみずしい木の実をもぐもぐと食べていた。
ちょっと固いけれど美味しい。
朝食のあとにあの双子姉妹のもとへと向かった。
「昨日ぶりお姉さん」
「約束通り今日渡したい物があるからこっち来て」
ちなみに今日片方に結わいてる髪型の方をリチェ、カチューシャをしている方をリカと区別してる。
例外なく双子の彼女達は顔だけでは見分けがつかないが本人たちが意識して見分けられるように髪型を変えてくれていた。
「ハイ、これ」
『……赤い』
緑色のものを渡されると思っていたが、綺麗に折り畳まれた布を両手でもって広げてみれば
コキリ族の服装によく似た紅色のワンピースだった。
しっかりと縫われたそれはシンプル且つお洒落でVネックの部分にはお洒落の一つか、紐が交差するよう編み込まれてて腹部には腰にベルトを通せる部分も付いていた。
それと長袖で袖をまくれるくらいしっかりした布地だった。
うわぁ……素直に感動。
この子達の腕は売り物になるくらい凄かった。
ワンピースは嬉しいけれど、自分は下半身がスースーするものはあまり履かない。下はジーパンを履いたままにした。
それに関して二人は多少不満を感じていたが諦めてもらうしかない。ここの気温は少し寒いのだ。
その他にもベルトとブーツを貰った。やっぱりこれって外の……まぁ、不要になったならそのままにしておくより頂いてしまった方が物も不幸ではないか……。
「似合うわお姉さん」
「でも何か足りないわ……そういえばあれもあったわねリカ」
「あぁ、あれもいいわね」
もう一度仕切りの向こうへ追いやられ、
Yシャツのような……というかほぼYシャツも着せられた。色とのアクセントらしい。こちらは薄手なので重ねて着ても特に気にならない。
何であるのとはもう聞かない言わない。
『あ…ありがとう。ホントになんのお礼をすれば良いのか……』
「お礼はいいよ。何か作らないと腕が鈍っちゃうから♪」
「服を作るの楽しいし、服を着てくれると嬉しいしね♪」
すぐ汚す男たちはイヤだけど、と双子が合わせて言うとリンクは気まずい顔をした。
自覚はあるらしい。その反応に少し苦笑した。