デクの樹サマの中




『リンク!』


異変が起こったデクの樹。

すでに何人かのコキリ族の子どもたちが集まっていた。デクの樹の比較的近くに居住を構えてる子どもたちが起きたのだろう。元気ではないデクの樹にみんな不安の表情を浮かべながらデクの樹に呼びかけていた。

サリアがこちらを見て声を掛けに近寄ってくる。
その表情は不安だらけで今にも泣きそうだった。


「ユキセこれはいったい……」

『それは……、』

「お姉ちゃん!
どうしようっデクの樹サマ返事が無い!!」


サリアに今までのあらましを説明しようと思ったがそれをリンクに遮られてしまい、とりあえずデクの樹のそばに寄る。

触ってみるとデクの樹は以前よりも冷たくリンクの言う通り、何度声をかけても何も応えなかった。
思わず眉を寄せる。
呪いの侵行が進んでいるようだ。足元を見たら草たちは黄色く萎れていた。



「ねぇ、外の世界にデクの樹サマを治す方法はないの!?」



痛いほどに腕を強く握り締めてきてすがる目でこちらを見つめてくるリンク。
植物が受ける病気は人間のように簡単に治ることはない、況してやデクの樹のような精霊に対して治す術など……。
ハイラル城にいる王女が力があれば、その聖なる力で呪いを剥がすこともできるかもしれない。けれど私は一度も会ったこともないし、夢物語にも良いところだ。
結論を出すなら、この未来を変えることなどできない。
静かに首を横に振った。


『……ごめん』

「そんな……ッ」


リンクの表情が絶望に染まり掛けたとき、何処かから濁ったような耳に障るような声が聞こえた。


――クク………。


『………?』


どこから聞こえるのかが分からずに不気味な声に思わず体を抱きしめる。
リンクが近寄ると傍のデクの樹の皮膚からいきなり鎌のような爪が突き出てきた。


『……ッ!?』

「わあっ!何あれ!?」


慌ててリンクを後ろへ庇い、指でスライドさせたカッターナイフの刃の部分を謎の鎌へと向けながら突きつける。
カタカタと手が震えるが武器を持ってるのは自分しかいない。

鎌が突き出たところから穴が開いて、蠍のような、蜘蛛のようなデカイ一つ目が特徴の奇怪なものが現れた。
画面の向こうでよく見た姿に全身の毛がそわ立つのを感じた。


(ご、ゴーマだ………)


普段コキリの森の中にまで入ってくるはずのない魔物にコキリの皆が怯えている。
今こんな所で攻撃でもされたら皆にも被害が出るだろう。

ギョロギョロと大きな目玉でゴーマは回りを見回した。

来るかと思い、カッターを握る手の力を痛みを感じるほど強くした。


「石…、……石はドコだ。…キキ……石を寄越せ……」


「い、いし……?」


リンクが眉をひそめる。
どうやら石を探してるだけのようで自分達には眼中にもなかった。ゴーマはデクの樹に穴を空けてそのまま姿を消してしまった。
去ったことに息を吐き出す。いつのまにか呼吸を止めていたようだ。

カッターナイフを下ろしてようやくホッと息をつく。
大きな穴を開けられても、デクの樹はなにも声も出さなかった。意識を失ってしまったのだろうか。


『中、入れそう……』


誰かから松明を借りて、中を照らせば先が見えない空洞が続いているのが確認できた。
カッターナイフの刃を仕舞い込み、ポケットに突っ込んで脚を付ける場所を見る。


「え?い、行くの?」


リンクは先程の魔物に怯えてるが、行かないとデクの樹は助けられない。下手したら翡翠は奪われてコキリの森の全てが消えてしまうかもしれない。
それだけはだめだ。

その言葉に敢えて返答せずに震える足をわざと暗闇の中へ踏み出した。
周りを松明で見て魔物がいないか警戒しながら少しずつ歩く。
自分の後ろをリンクとナビィもついてきた。


「蜘蛛の巣がいっぱい……」


この大広間はだいたい原作と同じ感じの空間だった。
薄暗く、松明の明かりを頼りに目を凝らせば見えるくらい。
原作の記憶なんて数年も前のもの。
粗筋は大体覚えているけど細かくは覚えていない。

……樹の中がこれほど空洞って危ないんじゃないか?
それともコキリ族の避難所に使うのだろうか。此処は。
とにかく、デクの樹があの状態だ。リンクは自分が守らないと。


『リンク、絶対に離れちゃ駄目だよ。ナビィは危険を感じたらすぐに隠れて』

「う、うん」

《分かったわ……》


リンクと決して離さないよう手を繋いで辺りを見回した。
地面から草が生えてると思ったらデクババの頭が出てきてこちらに襲いかかってきた。
なんでナチュラルにデクババがいるんだ。
これも呪いの影響なのだろうか。

おかげで驚いて持っていた松明を落としてしまった。
幸いに火が消えて燃え移ることはなかったが武器になりそうなものが一つ無くなってしまった。
なんてことだ。

冷や汗でカッターナイフを持つ手が滑りそうになったが、タイミングを見てグサッと刃で茎を刺したら怯えるように頭を隠して二度と姿を現わすことはなくなった。
倒せたらしい。
ちなみにアイテムが出現するというメタ的な現象はなかった。


《見て、地面に穴があるワ。下から気配がする……》


ナビィが向かった所には本来ボス部屋へと続く穴。
だけどこちらを警戒してるのか、思い切って強く踏んでも破れないほど頑丈な蜘蛛の巣が立ち塞がってそれが邪魔で下へ降りれない。
松明で消せそうにも見えるが落としてしまった。
外に出て借りることも考えたがこのコキリの森に油は貴重品でもある、布を巻きつけただけのもすぐ燃えて消えてしまうし……。

辺りを探すと
上へと続く梯子を見つけた。


(………なんであるんだろ)


というか、ご丁寧に梯子がある事がおかしい。
……デクの樹が手を貸してくれている、とかはないか。そこは深く考えないでおくことにした。

なんだろう、なんだか目の前の罠を罠と解っておきながら敢えてそれに突っ込んでる気がした。



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