お騒がせ
「わぁ!?」
頭上から魔物が落ちてくるのにリンクは驚いてパチンコを乱発した。落ちてきたのはゴーマのような小さな魔物だ。天井を見れば卵のような気味の悪い塊が複数。
あれから孵ったようだ、ひとつだけ空になった卵塊がある。
まぐれか玉が魔物に当たり、魔物は消滅した。
《気をつけて》
「う、うん……」
ゴーマは至るところに出産?……卵塊を産みつけているらしい。こちらの気配を察知したら直ぐさま卵が孵り、襲ってくる。
生まれてすぐ餌をねだるとは食欲旺盛だ、笑えない。
ゴーマは雌なんだろうか、それとも雌雄同体?
人為的な空間の中、梯子を上り上を目指した。ところどころに女郎蜘蛛のようで子ども一人分は大きさのあるスタルチュラが邪魔をして、簡単には前に行けなかったがデクの実で内側を叩けば倒せた。
ただでさえ腕力のない自分が蔦を登るのは容易ではなく、決して下を見ないように涙目になりながら必死で登った。
『下は見ない下は見ない下は見ない下は見ない……!!』
《あとちょっとダヨ!頑張って!》
「手離したら落ちるよ!」
『嫌だ!落ちたくない!』
リンクの声援に最悪な未来を想像しかけて思わず蔦を握る手に力入れて顔を横に振る。
リンクがマイナスな言葉は掛けてはいけないとナビィに諌められていたが、それを知らずに手の力だけは抜けないよう必死に上がった。
手がプルプルするの絶対やばい、死にそう、いや死にたくない。
人為的な構造ならここにも梯子が欲しかった。
やっとのことで天辺らしい場所までたどり着く。
あれなんでここまで登ったんだっけ……ナビィが下にあの巨大な魔物の気配がするって言ったからだっけ……。
え、本当になんで登ったの。火で燃やせば良かった……あれ、火でもダメなんだっけ。
この後どうしたのか忘れてしまった。
『ひぃ……ひぃ……死ぬ……うぇっぷ』
仰向けに倒れて人生で一番働いた手を弱々しく摩る。これ絶対筋肉痛になる……。
ふぇ、もううごきたくないよぅ……。
このままリンクに全て任せてももういいんじゃないかな……あっ、ここにこのまま置き去りにするのはやめて欲しい。
今、切実にワープが欲しい。
ナビィの勧めで少しだけ休憩貰えてすっごく助かった。
ナビィパイセンアザッス。
やっと体力と精神が回復してきて冷静になれた。
このあと確かなにか落としてあの蜘蛛の巣をぶち破ったような気がする……なにを落としたんだったか。
え、人……?いやいやそんなまさかー。
『うわっと、っと……』
人一人ぐらいなら乗っても平気そうな枝に乗り(ミシミシいうけど)、下を見た。
ちょうど下にあの太い蜘蛛の糸の巣があり、此処から飛び込めばそれが破けてその下に行けそうである。
けれど私は恐くてその勇気はない。
リンクにやって貰えば良かった。
私登らなきゃ良かった。
『高いなぁ……』
ぼやくと後ろからリンクが自分にならって見る。
うわっと溢していた。
今、枝にいるのは標準体重より少々高……ごほん、自分とリンク。
ここで大きく動けば枝がボキリ、とすぐに落ちていくだろう。
そんなフラグが立っている様な気がする。今日何度目かの冷や汗が出てきた。
いけない、非常にいけない気がする。
『あ〜、と。リンク、少し動かないで欲しいかなぁ〜……なんて』
聞いてくれれば嬉しかったが……。
思ったより声が小さかったようでリンクがまた一歩こちらに近寄ってきた。
「え?」
その時既に身体が傾いて枝を揺らしまくっていたリンク君。
枝は限界だとでも自分に訴えるようにミシッミシシ……と不安が増加する音を立てて最終的にはバキッという良い音を立ててくれた。
フラグは見事に回収されました本当にありがとうございました。
「え……!?」
『……』
ああ、落ちる……。
どうせならバンジージャンプに慣れておくべきだったかなぁ。固定もされていない上に一歩間違えたら即死乙だけど。
さよなら異世界、こんにちはあの世……。
朽ちた枝とリンク一緒にまっ逆さまに落ちた。
『ひぃいいいい〜!!!』
「うわあああ!!!」
《ユキセ!?リンク!?》
スローモーションの様にゆっくり落ちていく感じがして、臓物が浮いてる感覚がすっごく気持ち悪い!
おぇっ!死にそう!
《リンクー!!ユキセー!!》
小さな妖精が必死に追いつこうと羽をばたつかせて急降下してるのが目に入った。
全速力過ぎて蝿みたいになってる。
リンクが下の蜘蛛の巣の範囲からずれそうだったからとっさに手を掴み引き寄せた。それを考える余裕はまだ一ミリほどはあったようだ。
『ぐへっ!!』
背中から巣にぶつかったが、勢い良く当たった為に少し息が詰まり痛めた。
どちゃくそ痛い。
変な声が出た。
流石に高いところから落ちてきた二人分の体重に耐えられ無かった糸は破れ、私たちは糸によって減速はしたもののそのまま更に落下した。
そしてバシャン!と派手な音を立てて大きな水溜まりへと落ちた。
水の中に落ちた衝撃か、眼鏡が外れた。
視界がさらに一気にぼやける。
しかも衝撃でか動けないときたものだから一大事だ。
水に脊椎を打ったみたいで身体が痛んだ。水の中は抵抗感があるため、身体も思うように動かなく何も出来ずに溺れていくしかない。
駄目かもしれないと思ったとき、視界にぼやけた金色が映った。
「○△※×%!」
ごめん、なに言っているか分かんない。
手をこちらに差し出す彼はきっと手を掴めと言いたいんだろう。リンクの小さな手を掴んで水面へと脚を動かした。
少々身体をゴキゴキ動かして骨を正常な位置に戻さないと痛いままかもしれない……。
あいたたたた。
『ぷはっ……うへぇ〜……』
「っふぅ〜。姉ちゃん浮いてこないんだから心配したよ」
少し頬を膨らませて此方を見る。少し理不尽ではないか。リンクが地面に打ち当たらないようにとか、背中から水溜まりに着水したとかこっちもいろいろと苦労したんだって。
骨とか眼鏡とか骨。
視界がぼやけてしょうがないのでリンクに眼鏡を探してもらい、その間に陸に上がってびしょ濡れの体をどうしようかと考えた。
『…………』
《…いくら妖精でも乾かす力はないわヨ》
『ちぇっ』
「……?
何か声が聞こえない?」
上手く眼鏡を見つけ出してくれてこちらに渡してくれて、それを掛ける。
幸いズレもレンズにヒビも入ってないようで助かった。視界を奪われてはここでは何もできなくなる。
濡れてしまった服を絞り、どうしたもんかと考えていると
しばらく落ちてきた方を見ていたリンクが聞いてきた。
しかし、特に何も聞こえな……。
「うひょわああああ!!!」
……聞こえた。
また派手な音を立てて水の中に落ち、絞ったぶん幾分か水分が落ちてこれからどうやって乾かそうかと考えてた服をまたびしょ濡れにされた。
今度はナビィもびしょびしょだ。妖精も濡れるのね……。
《……私もそんな力が欲しいわ》
『……そうだね』
そのまま溺れてくれないかな。