飴玉の味
「……お腹空いた」
我らが勇者様はしゃがんでお腹を押さえながらそう呟いた。
さっきまでのシリアスさはどこかへ飛んでいった。
あれだけ泣いたからかリンクのお腹はグーグーと必死に空腹を訴えていた。
そういえば朝から何も食べていないのだ。
朝方にコキリの森から出ていったから……太陽は真上。
いつの間にかお昼時になっていたみたいだ。
そういえばカバンに飴があったな。
『そんな君に魔法の飴をあげよーう』
《魔法の飴?》
「なになに!?」
わくわくとカバンを見つめるリンク。
自分は何がでるかな、何がでるかな〜とお昼の挨拶が番組名のサイコロを振るBGMを口ずさみながらカバンをがさごそ探していた。
あれー奥にやっちゃったかなー。
『お、あったあった。はいリンク』
《思いきり探してたネ》
「……?
何この包み」
『飴だよ。
袋のギザギザの部分をこうやって……』
ぴりっと包装を破り、包みをあけてこのまま飲み込まないようにねと注意しながら飴玉を口へとぽいと入れる。
同じことをされてラムネ菓子を喉に詰まらせたのは苦い思い出だ。
「ん!甘酸っぱい!」
『噛まないで口ん中で転がしてね』
お菓子なんて環境上、木の実とか自然の物しか食べたことが無かったリンクにとって飴は新鮮で良かったみたいだ。
リンクにあげたのは包装から見て林檎味。自分もすもも味の包みを開けて口に放り込む。
酸っぱさと甘さで小さな幸せに包まれる。
『魔法の飴のお味はいかが?』
「とっても美味しい!」
ニコニコしながら口をモゴモゴさせる姿を見て心の中で可愛いなと思いながら悶える。リスかハムスターみたい。
あぁ、癒しだ……。
《ユキセの持ってるものって不思議ネ。デクの樹サマから聞いたことのないものばかり》
『そりゃ自分しか持ってない特別なものからね、デクの樹サマが知らなくても仕方がないよ』
リンク達からしたら異世界の物だ。
自分だけしか持っていない、元の世界の技術の賜物の携帯や音楽プレーヤー。
もちろん人前には出さない。
まあ一度はリンクは目にしていたけどね、最初出会った時に耳にかけたのを見ていたはずだろうけれど恐らく忘れてる。
存分に忘れて話題に出さないでくれ。私が困るから。
《ユキセのカバンって他にどんなもの入ってるの?》
『いやぁ……特に旅に必要なのとか、スケッチブックとか食料とかそんなのしかないよ』
《剣とか武器は?》
『前に使ったこのカッターナイフのみ。魔物に出会ったら即逃走』
ほら、兵法に“三十六計逃げるに如かず”って言うじゃないか。
前に弾き飛ばされたこのカッターナイフは元から簡単にかつ安全に折れる設計になっているため、刃が欠けてしまって出せる刃が短くなってしまった。
カッターナイフなんて硬い段ボールを二、三枚重ねて切れる程度の厚さと鋭さしか持たない文房具をどう扱えと言うのだ。
武器として扱うのは寧ろカッターナイフがかわいそうだ。
用途目的な意味で。
剣を扱うにしても腕力なんてないし(剣も無いけど)、脚力体力も無いし。
リンクが持っているコキリの剣でさえも振り回すのに体力が必要だし。
それに自分は文系バリバリの一般美術部員だったし。
《それで大丈夫かなァ……》
ナビィから呆れた感じのため息が聞こえた。
自分は自分の実力を自覚してるつもりではある。
このままでいるつもりはないけれど腕力も体力もないからそこが困ったものだ。