ハイラル城下町




脳内に流れるドナドナをBGMにガラガラと荷馬車に十二分に揺らされたあと、酔いかけながらもやっとのことでハイラル城下町にたどり着いた。
後半は揺れに揺れて三半規管がやられてしまい、気持ち悪さでしばらく耳のことは頭から離れていた。

吐き気はそれなりにあっていっそのこと指に喉突っ込んだ方が楽なんじゃないかと思うほどだった。
いや、逆にオロロンが止まらなくなりそうだからやめておいてよかった。
ハイラル平原を私の吐瀉物で汚したくない。

エルフ耳発覚からだいぶ長い時間が経った気がする。
荷馬車がやっと止まりヨロヨロと降りる。


「ついただーよ」

『ありがとうございます……』

「うわぁ……!此処がハイラル城下町かぁ!」


リンクとナビィは目の前の巨大な建物たちに夢中で気づいていない。
しばらくしたらおさまるから報告しなくても良いだろう……うぇっぷ。
たどり着いた先、ハイラル城下町は様々な人が行き交い、あっちを向けば旅芸人が客を呼び寄せていて、
反対を向けば店員が新鮮な野菜や果物や肉など、そしてその加工品を売り出していた。
中にはアクセサリーや服も売っている。
まだフラフラと気持ち悪さはあるがいずれ治るだろう。

キョロキョロしてると田舎もんだと思われるかな……。
一から十まで見たくなるほど、それほどここは広くとても賑やかだった。


『うわぁー……
ここまで賑やかだなんてなんだか迷いそう(リンクが)』

《そうね(リンクが)……ってリンク?》

『え、リンク?どこ行ったの?』

《まさか、ほんとに迷子!?》


ほんの数秒前では自分のとなりにいたはずのリンクがどこかへといなくなっていて、ナビィが大きな声を出したことで発覚した。

ワオ、予想通りの展開!?
あまりにも驚いて某漫画の風紀委員長の口癖が出てきちゃったよ!?
どこを見ても見当たらなくてナビィも私も途方にくれた。


《ナビィこっち探すね!》

『私はこっちを探すよ!』


手分けしてリンクを探すことにした自分は市側を、ナビィは広場側を探すことにした。
ナビィが物盗りに襲われないことを祈る。
妖精はここらじゃ珍しいし……大人に妖精って見える存在なのかは分からないがもし見えていなかったら私は独り言を言う怪しい子どもになってしまうけれど。

もう、珍しい物が沢山あってはしゃぎたいのは痛いほど分かるし、私もこうして走っているが
思わず足を止めそうになってしまう。

人知れず勝手にどこかへ行くのはやめてよ〜……。
ヒィヒィとすぐ疲れ果てても辺りを見ながら必死にあの緑の帽子と金色を探し回るのだった。



* * *



こんな人が多い所は背が大きいほうではないとなかなか探しづらくて、ぜぇぜぇと息を吐きながら震える脚をなんとか支える。
指と腕の、筋肉が、なんだかすごく痛い……!
筋肉痛がようやく来たようで死にそうになっているのでリンクを探すどころではなくなりかけていた。
ごめんナビィ、私もうダメそう。

リンクなら食べ物屋のところにいそうな気がするんだけれど……屋台の美味しそうな匂いが私のお腹の音を誘い出すのだからリンクもきっとお腹を空かせていると思うのだ。

けれど道中弱い魔物などをやっつけたり魚がどうやって飲み込んだのか胃の中に入ってたりして得たルピーはほんのわずか。
しかも飴もその他菓子もルピーも全て私のカバンの中にしまっているのでリンクは無銭飲食することになってしまう。
どうか私がたどり着くまでに屋台の食べ物に手を出さないでいてほしい……。

ここら辺一体は美味しそうな匂いの立ち込める食べ物を扱う屋台が多い。
色んな屋台があって、少々小腹が空いた自分にとっては十分な誘惑だった。あれもこれも魅力的なものである。

あ、パンの中に肉や野菜を詰めた料理美味しそう。
あれはハンバーガーかな。この世界で冷蔵庫はないから絶対に熱加工された料理がいい。
じゃないと私のお腹は終わる。

木の実を砂糖かなにかで甘く煮詰めたお菓子のようなものもあるし、コキリの森で食べていたような実そのままや干し物より美味しそうなのだ。
あそこでも炎が楽に扱えたならこんなものを沢山みんなに食べさせてあげたいなぁ……。

なんだか元の世界とあんまり料理文化は変わらないようだ。
文明的にも清潔さはあまりここに求めちゃいけないだろうが、選ぶものは慎重にしなければいけないだろう。
けれど久しぶりの動物性たんぱく質に私はとても興味をそそられてしまった。


『もう……勝手に買ってたべちゃうからね』


半ばやけくそになって、けれど肉は怖くて買えず結局ギリギリのルピーで足りたただのパンを買い食いした。
こっちもお腹空いてしかたないのだ。
こんなそそられる匂いが漂う屋台に腹の減った人間がいれば人の限界なんて紙くず同然になる。

……それにぶっちゃければ、やはりコキリの料理より美味しかった。

生活環境がコキリよりもある程度整っているのは当たり前、材料や調味料もたくさん手に入るので本来の味を生かしたものよりもやはり熱処理と加工されたもののほうが味覚的にも満足感が違った。
コキリのみんなにも食べさせてあげたいなぁ。

食べながら辺りを探すが、緑の帽子を被った子どもを見つけてもリンクと間違えることがあったりして、だいぶ人混みに疲れた。

辺りには休めるような場所もなく、屋台のそばに立ち止まってるとジロリと睨まれてしまって盗っ人扱いされても困るので休めないのだ。

ちょっと恐いけれど……と、
人混みを避けるために路地裏へと誘い込まれるようにその場所へと足を踏み入れてしまった。



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