迷子、拾いました
タマムシシティの郊外に佇む家。記憶の限り、外装とかはそのまんまだ。
それが(たぶん)自分ん家。ぎりぎり7番道路に入る前にある。大通りから少し外れた場所で、他の家と共にぽつんとそこにある。というか一番端っこ。
ぎりぎりタマムシシティの中にあるのを知ってか知らずか(恐らく後者)トレーナーが勝負を仕掛けて来た。
「バトルだ!」
と意気込んで掛かってくる。しかし、自分はトレーナーカードを持っていないため戦う権利が無い。従ってバトルを受ける必要も無い。
元気はつらつ、天真爛漫が似合う虫網を持って虫かごの中にボールを入れている少年が
得意げにバトルを申し込んで来たがそれを説明すれば渋々帰っていった。
何だよ紛らわしいなぁって感じで帰ってったよ。なんか悲しくなってきた。
すまんな少年。
自分、あまり空気読めないんだ。
『よいしょっと』
小脇に抱えてたのを地面に下ろす。
包んでいた上着を取り払い外に出した。あ、ちょっと上着が汚れた。あとで洗濯機に放り込んでおこう。
黄色く丸いフォルム、耳が菱形のこねずみポケモン、ピチューがきょとんこちらを見上げる。
うん、可愛い。
実はこのポケモン、ロケット団が設置したのか誰かが設置したのか分からないが、ねずみ取り用の捕獲機に入っていた。
ねずみ取り……ね。
うん、……あながち間違ってはいない。
進化後もでんきねずみポケモンと分類されるし。
なぜジョウトのポケモンが此処にいるのかとか分からないけど。
かわいそうだからとどうせ家へ帰るために町の外へ行くから小脇に抱えて連れてきた。
暴れることなく抱えられてくれて良かった。こういう時に意思疎通を図れるのは便利だった。
どこで人間の言葉を習ったのだろうか。
『ほら、もう行って良いよ』
とくに捕まえたいという願望は薄いので逃がした。そんな願望は無いと言う訳では無いけれどくりくりお目目の可愛い系は自分に合わない気がして。
原作の中なら図鑑完成のため、
なりふり構わず捕まえたりしたけど現実となると……全てのポケモンに対して責任とって育てる気も愛情かける自信もないし気がひけるのだ。
それに博士と知り合いというわけなどなく、こんな未来なさそうな人間に図鑑は貰えないだろうな
そんなに図鑑も試作品ぽいし、沢山あるわけでもないし、図鑑埋めるのも大変そうだし。まぁちょっと憧れるけれど。
一度振り返って帰るよう促して、家の玄関扉をあけた。
すると今まで直立不動だったのに急に家の中に入っていってしまった。
『あッ、ちょっと待っ……!!』
止める間もなく中へ入っていって、中から悲鳴が聞こえた。
後でどうやって説明したらいいんだろう。なんだかすごいめんどくさいな。
初めてだからこういうのわかんないや……。