萌ゆる緑に身を焦がす
「シンク、指入れますよ?」
「うん」
僕の肩足を抱え上げ、カプセルローションを掌で潰したイオンの言葉に頷く。
いちいち言わなくたっていいのに。好きにしてくれたっていいのに。
そう思うのと同時にちゃんと声をかけてくれるイオンの優しさが嬉しくも思う。
「あ、う……んっ」
ゆっくりと入ってくる指に穴が吸い付くのが解る。何度かの経験を経て、そこが気持ちいいところだと知った身体が期待しているのが解った。
まだ知っただけで身についていると言い切れないが、それでも着実に僕の身体はイオンによって作り替えられている。
イオンが気持ちよくなれるように。イオンと気持ちよくなれるように。そう考えるとお腹の奥が疼く気がした。
「ローション、入れてきたんですね。とろとろですよ」
「あ……っ、えらい?」
「とても。シンクがどんどんえっちになっていくから僕はずっと興奮しっぱなしです」
信者達どころか守護役達だって知らない。興奮に赤らんだ頬。僕しか知らない顔。夜目が利くように訓練された身体ではよく見える。気分が良い。
イオンの指先が僕のいいところをタップする。じわりと滲みだす快感に喉が鳴る。
指一本じゃ足りなくて、もっとと強請ればすぐに二本目も入ってくる。中を満たすものが増えて圧迫感を覚えるが、すぐに快感にすり替わる。
「あっ、んっ、ゆび、きもちい……っ。そこ、んっ、ぁ、いおんっ、きもちいいっ、あ、ぁー……っ、うあっ」
「可愛い。気持ちいいって言えるようになりましたね。ここが気持ちいい?」
「うんっ、きもちいい……っ、もっと。イオン、あ、ぁっあぁあっ!」
ローション特有の粘度の高い水音を立てながら、イオンの指が抜き差しされる。疑似的なピストン。気持ちいいところを何度も押し上げられて身体が跳ねた。
触られていないのに一度射精したものがまた芯を持ち始める。僕の身体も期待しているのだ。
こみ上げる快感に素直に喘ぎながら、可愛いと言われる度にまた心臓が跳ねる。いつもならここまできたら同時に前もいじられて、中でイけるように何度も射精させられる。
けど今日はそれ以上に進みたい。イオンが欲しい。イオンの一番が欲しい。僕だけのイオンが欲しい。
「イオンッ、あ、もっいい……っ、いいからっ、はやく、挿れて……っ」
「そんなに欲しいんですか?」
「欲しい……っ、イオン、なか、あっ、ぁああっ」
「もう少しほぐしましょう? シンクに痛い思いをさせるのは本意ではないんです」
「っく、ん……っ」
イオンは優しいけれど、今はそれがじれったい。僕は早くイオンが欲しいのに。
腹に力を込めて身体を起こすと、逆にイオンを押し倒す。ローブを捲り上げて既に勃ちあがっているものに手を這わせる。
僕の痴態を見てこれだけ興奮しているくせに、なんで挿れてくれないんだと苛立ちを覚える。
けれど流石に濡れていないものを挿れたら痛いことくらい解るから、横髪を耳にかけて堅く立ち上がったものを咥えこんだ。
「シンク……ッ!? いきなり、どうっ、んん……っ」
「ん……っ、こんなに、硬くしてるくせに……っ」
イオンの声が跳ねるのを聞きながら唾液をまぶすように舌で舐め上げる。僕の口でたっぷりと濡らしてやる。
ローションを使った方がいいのかもしれないが、イオンは二度も三度も出せるほど体力がない。
何度か口に出し入れしてしっかり勃起させたところで顔を上げ、イオンの上に乗り上げた。
「イオンの初めて、もらうね?」
目を丸くしているイオンを見下ろしながら硬いものに手を添えて、ローションを溢れさせる穴に宛がう。
イオンの手もそうだが、ここに来る前に自分でもほぐしているのだ。すっかり受け入れ準備の整っている穴は思っていた通り、特に痛みもなくイオンのものを呑み込んでいった。
「あ……うっ、ん。指と、ちがう……っ」
「……っ、シンク、痛みは……」
「ない、痛くない、から……っ」
熱い。あと、指と違って中をみっちりと埋めていっているのが解る。隙間が消える。僕の中がイオンのもので埋められていく。
それがたまらなく幸福で、一番太い部分を呑み込んでからは一気に腰を下ろした。ごり、と硬いものがいいところを押しつぶす感覚に思わずのけぞる。
圧迫感はある。でもそれ以上に気持ちがいい。おなかがいっぱいだ。今までで感じてきたもののなかでも一番幸福感が湧き上がる。
天を仰いで湧き上がる快感と幸福感にぼうっとしていたが、震える僕の足にイオンの手が添えられた。
見下ろせば眉根を寄せるイオンの顔があって、イオンもまた気持ちよさを堪えているのが解った。
そうだよね。イオンも初めてだもんね。
本当にイオンの初めてを貰えたのだと思うとそれだけで気持ちがいい気がして、中を締め付けてしまう。
それだけでイオンが小さく声を漏らすから、本当に慣れていないのだと解って思わず口角が上がった。
「イオン、きもちいい……っ?」
「はい。熱くて、溶けてしまいそうで……っ、シンクの中、凄く、気持ちが良いですよ……っ」
そう言ってイオンは長く息を吐くと、僕の内腿をなぞる。肌の薄い部分を這う指先の感触を明確に感じてぞわりとする。
だめだ。僕ばかり気持ちよくなるんじゃなくて、イオンに気持ちよくなってもらわないと。
そう思うのに中を埋めるものを離したくなくて、あと初めての圧迫感にうまく足に力が入らない。僕も息を整えようと長く息をはいたところで、イオンの手が僕の足を掴んだ。
「すみませんっ、ちょっと、我慢が出来そうにないです……っ」
「は? え、ぁああっ!?」
イオンが僕の足を掴んだまま起き上がったせいで、また僕はベッドに押し倒される形になった。そのせいで奥を抉られる形になって声がひっくり返る。
僕が待ってと言うよりも早く、イオンが僕の足を抱え込んだままゆっくりと腰を離し、また押し付けられる。
ぐちゅん、とローションと腸液が混ざったものが音を立て、いいところを押しつぶされる気持ちよさに僕はのけぞった。
「シンクの、中……きもちよくてっ」
「あっ、いおっちょ、っと、待……っ、んっ、ぁああっ!」
がっつくように僕を責め立てるイオンに頭の中でちかちかと火花が散る。突き上げられる度に首元でカラーがチャリチャリと音を立てていた。
こんなに余裕がないイオンを見るのは初めてで、イオンが僕の身体で気持ちよくなっていることが、イオンにこんなにも求められていることが嬉しくてたまらない。
もっと僕だけを見て。僕だけに夢中になって。僕を一番にして。僕以外見ないで。
独占欲と執着心でぐちゃぐちゃになった頭に、お腹の中を満たされる幸福感と中を突きあげられる快感が入り混じって溶けそうになる。
「んあっあ、ぁっあうっ、んんっ! はっあ、いおんっ、もっと……っ! あ、ぁああっ!」
ローションに濡れた肌がぶつかる度に音を立て、二人分の重みにベッドが抗議するようにぎしぎしと鳴る。
中を突かれる衝撃に閉じていた目を開けてみれば、潤んだ視界でイオンが気持ちよさそうな顔で夢中になっている顔が見えた。
ああ、そうか、可愛いってこういう時に思うんだ。
もっと気持ちよくなってほしくて、意図的に中を締め付ける。イオンの顔が快楽に歪んで、それがまた愉しい。
かと思えばいいところを強く押し上げられて僕の腰が跳ね上がる。気付けば自分のものがこれ以上ない程に張り詰めているのが解った。
「あっ、ぁああっ! いいっん、きもちっい、あっ、いおん……っ、きもちいっから、あっ、ぁ」
「僕も、すごく気持ちが良いですよ……っ、ずっと、こうしたかった……っ!」
「うぁっ! あっ、ひぐっ!」
僕の両膝がイオンの肩にかけられたかと思うと、イオンが上から覆いかぶさってくる。
腰が浮き上がり、また違う角度で奥を抉られて喉を晒す。目の前の身体にしがみ付きたい衝動を必死にこらえながら枕をきつく掴む。
縛ってもらうのを忘れていた。気付いたところでもう遅い。耐えるしかない。
「シンク、愛してます。貴方のこと、とても。貴方だけを。僕がこんなことをするのは、貴方だけですよ」
「い、お……っ」
ぶわりと身体の奥底から湧き上がる衝動と共に涙が溢れ出す。その涙をイオンの唇が掬い取って、そのまま唇をぶつけ合う。
我慢できずにイオンの首に腕を回してしがみつく。身体を折りたたむ息苦しさとお腹の中を満たされる圧迫感に息も絶え絶えになりながら、それでもこのまましがみついていたくて。
中のものがゆっくりと引き抜かれれていくのが嫌で喪失感に声を上げれば、またばちゅんっと音を立てて奥を突きあげられたことに思い切りのけぞった。
「ごめんなさい、今日だけは……っ、中に、出させてもらって、いいですか……っ!」
「あっ、ぁあ、あっ、んぁんっ! いいっ、からっ! 好きに、してっ、いおんのっ! あっ、ぁあっ、ふあ、ぁ、あっ、あぁあっ!」
ぶちゅっ、ぐちゅっと音を立てながら何度も腰を打ち付けられる。
好きにしてほしい。この身体でイオンが気持ちよくなれるならなんだってすればいい。
ちかちかと頭の中で火花が散るのを感じながら、耳元に聞こえるイオンの荒い息遣いに僕の性感まで煽られる。
しがみついた背中に爪を立てながら、腹の中を抉られる度にこみ上げてくる射精感に全身の筋肉を強張らせる。
「いおっ、あ、んっ、あっぁああっ! 出したいっ! ぼくも、出したっあ、ぁっあ」
「ふふ、一緒に、出しましょっか」
耳たぶを甘噛みされ、首筋に吸い付かれる。
いっしょ、という言葉に腹に力を込めて我慢する。それがとても甘美な言葉に聞こえて、今にも果ててしまいそうなものを何とか抑えようとした。
多分それが気持ちよかったのだろう。イオンもまた小さく声を上げながら腰を打ち付ける速度を速めてきた。
爆発しそうな気持ちよさがぐるぐるとお腹の中で出口を求めていた。出したくてたまらない。でもまだ『イって』って言われてない。
いろんな感情が渦巻いて頭の中が茹っているかのように熱い。煮詰まった頭の中はどろどろで真っ白なのにイオンでいっぱいで。ああ、たまらなく。
「『イって』」
ごちゅん、といいところを押しつぶされて、お腹の中に熱いものがぶちまけられた。
同時に囁かれた許しに腹の底から快楽が弾けて大量の精液が尿道を駆け上がる。ぞくぞくとした気持ちよさが脳天まで貫いて、目を見開いたまま声にならない悲鳴を上げる。
世界がちかちかと瞬いていた。身体の奥から湧き上がる言葉にならない衝動が止まらない。
こんなにも気持ちがいい。たまらなく幸福だ。快楽と満足感にぶるりと身体を震わせる。
多幸感が止まらない。イオンで満たされた身体の奥の奥から沸々と泉のように湧き上がり続けている。
「ぁ、あ……っ!」
「は……っ、シンク、とんじゃったんですか……?」
イオンが何か言っている。その声が耳朶を打つとぞわぞわとしたものが肌を撫でる。でも何を言っているかは解らない。
ずっとふわふわした頭が考えるのは、もっと欲しい。それだけ。
「あ……いおん、イオン……ッ」
唾液に濡れた唇を寄せれば舌がからめられる。互いの息を貪りあいながら舐めて、吸って。絡め合って。
でも足りない。もっと欲しい。
イオンの首から腕を離して、繋がったまま軽い身体を押し倒す。半分萎えかけていたものがまたいいところを掠めて、その気持ちよさに声を上げる。
「しんっ、んっ、ちょっと、待って……っ、あっ」
「やだ、いおんっ。もっと、もっと、ちょうだい」
イオンを見下ろしながら腰を上げて落とす。何度か繰り返せば中のものがまた硬くなって、それが気持ちよくてたまらなくて。
湧き上がる衝動のままに何度も繰り返す。もっと欲しい。さっきよりもずっとずっと気持ちがいい。
でも一番欲しいのは、中に熱いものがぶちまけられたあの時の幸福感だ。お互いの隙間がなくなって、全部一つになったような。
あれがまた欲しくて、イオンの上で身体をくねらせる。イオンが教えてくれたいいところに当たるように、何度も。
「あっ、ぁああっ、あっんっあ、ぁああっ! いおんっ、いおんの、きもちいいっ! もっと、あっ、ぁっあぁあっ! もっと、ほしっんっ、あっ、ぁーーっ」
「しんくっ、すこし、休ませて……っ、あ、なか、うねって……っ」
色んなものが混ざった中をイオンのものがかき混ぜる。お腹の中を埋めるものが心も体も満たしてくれているようだった。
とろとろにとけた頭の中はイオンでいっぱいで、自分の全部がイオンで満たされているようで。
沸々と湧き上がり続ける快楽と幸福感に溺れながら腰を動かす。滅多に聞けないイオンの甘い声がまた興奮を煽る。
「いおんっ、だしてっ、またっんっ、あ、ぁっあっ。ぼくの、なか、あっあ、ぁあっ! あっ、きもちいいっ、いおんも、もっと……っ!」
「は……っ、しんくっ、あなた……っ、完全に、トんでますね……っ! く……っ、あ、また、出そ……っ」
「んっんっ、だしてっ、あっんっ、はぁ……っ、いおんっ、ぼくも、だしたいっ! いおん、いおっあっ、ぁ、あっあぁあっ!」
下からずん、と突き上げられて声がひっくり返った。
気持ちがいい。気持ちがいい。気持ちがいい。ふわふわした頭の中をぐちゃぐちゃにかき混ぜられて。ああ、訳が分からないくらい気持ちがいい。
イオンが下から突き上げてくれるのに合わせて僕も腰を揺らす。ベッドが軋む音とか。首元から聞こえる金属音とか。全部全部気持ちがいい。
「ぁっあっ、あぁあっ! イオンッ、出したいっ、出させて……っ! あっぁああーーっ、ぁああっ!」
「っ、シンク……っ、『イって』」
「あ、ぁ──っ、〜〜〜〜っ!」
ぎゅう、と喉を絞りながら射精感に恍惚とする。またお腹の中で弾けた熱が僕の中を満たしていく。
しばし天を仰いだまま放心していたところで天地がひっくり返る。ぽすん、と背中を受け止めてくれたベッドにイオンに押し倒されたのだと気付く。
そのまま中のものが抜かれそうになって、僕はイオンの腰に足を絡めて引き寄せた。また隙間が出来るのはいやだった。もっとイオンで満たされていたい。
「んっ、いおん、もっと……っ、もっと、あっ」
「すみません、シンク……っ、もっと、ぼくに……体力があれば、良かったのですが……っ」
「あっ、やだ、あっ。もっと、んっ」
馬鹿みたいにもっとほしいとねだる僕の口をイオンの口が塞ぐ。
イオンが何か言っているのが耳に響いて気持ちがいい。頭が揺さぶられているようで、もっと聞きたいけれどキスもしたい。なんてもどかしいんだろう。
その首に腕を回して必死にしがみ付く。舌を擦り合わせる気持ちよさに肌が戦慄く。イオンの全部が欲しくて、その舌に吸い付く。
「あっ」
そうしてキスをしていく内に身体の力が緩んだ隙を狙って、イオンのものがずるりと中から引き抜かれた。
途端にぽっかりと腹に感じる喪失感。その寂しさにイオンに縋りつこうとしたところで、イオンの掌が僕の腹を抑え込んだ。
「こんな……強引な方法しか取れなくて、ごめんなさい……っ。シンク、『イって』」
「うあっ!」
特に触れられていたわけでもないそこからびゅる、と精液が溢れる。中を弄られたわけでもないのにこみ上げる射精感に耐え切れずに射精する。
訳が分からないままぱちぱちと頭の中で弾ける快感に身体を跳ねさせる。自分の身に何が起きたか解らない。
「『イって』」
「あっ!」
耳元で囁かれるコマンドはいつものように柔らかなものではなくて、身体の芯まで痺れさせるようなダイナミクスの力に屈服する。
びくん、と腰を跳ね上げてタイムラグのない射精に必死に息をする。飛び出したものは最初の勢いはなくなっていて、それでもどろりと溢れて肌を汚していく。
気持ちいい。気持ちいいけど、違う。そうじゃなくて。
混乱する頭でイオンに縋りつく。イオンの手が僕の頭を抱えるように回される。
「『イって』」
「ぁああっ!」
またびくびくと身体が跳ねる。コマンドに従った身体が中身のない絶頂に震え続けている。
更に二度、三度と絶頂を繰り返され、散々吐き出した精は最早先端からとろとろと溢れるだけになってしまった。
ひぃふぅと息をしながら、止まらない絶頂感に助けてほしくてイオンの名前を呼ぶ。
「いっお、いおんっ、イオン……ッ」
「良い子。ちゃんと出せましたね。えらいですよ。よく頑張りました」
「ぁ……」
ぎゅっと抱きしめられて。頭を撫でられて。キスをされて。
気持ちよさでぐちゃぐちゃになっていた頭が、褒められた幸福感にまたふわふわになる。
もっと、とねだろうとしたところで、またふってくるコマンド。
「良い子。『眠って』」
「あ……いお……」
途端に襲い掛かってくる睡魔に瞼が落ちていく。
唇に感じるイオンの柔らかな唇の感触を最後に、僕の意識はふつりと途切れた。