萌ゆる緑に身を焦がす
イオン
「て、ことがあったからさ。まあしばらくは警戒しなくていいんじゃないの」
「なるほど。報告ありがとうございます」
シンクが部屋に泊まりに来た際、ヴァンとモースの密談について報告をしてくれた。
ベッドに並んで座りながら話を聞き終えた後、唇に指を当てて考える。
モースの信仰心を突いた自覚はあったが、思っていた以上に根深いものであったらしい。
正直に言うと、そこまで強烈な信仰心というものを僕は理解できない。
それは僕が預言や始祖ユリアに対して信仰心を持っていないからであり、同時に中身が元日本人だからだろう。
少なくとも僕が知る限り、日本人の大半は特定の宗教を信仰していることを公言していなかった。
なんなら実家に仏壇があったから家は仏教だと思う。なんてゆる〜い価値観の人も居た。
例に漏れず、僕もそこまで熱心に特定の宗教を信仰していた訳ではなかった。
けど神社に行けば手を打ち鳴らすし、仏壇には手を合わせた。
鳥居やお墓に何かしたら罰当たりだと思うし、お天道様が見てるぞと言われればそれが太陽のことだとすぐに解った。
今思い返せば、あれは日常生活に混じった信仰心という奴なのだと思う。
そんな緩い信仰心しか持たなかった僕にとって、モースの狂信は正直言って理解できないものだ。奇異に映ると言っていい。
でもモースの預言という導を奪った者として、そして教団の導師として、これから僕はモースの先を歩き導となる義務があるのだろう。
きっと、導師イオンであるということはそういうことだ。
「……イオン?」
「ああ、すみません。少し考え込んでました」
「何か引っかかることでも?」
「いえ、そういうわけじゃありませんよ」
少し考え込んでいたら、シンクに心配をかけてしまったらしい。
僕の顔を覗き込んで不安そうな顔をするシンクに慌てて顔を上げる。
笑顔を作って大丈夫だと言う代わりに首を振ったが、シンクは納得して内容で眉間に皺を寄せている。
「僕じゃ頼りにならない?」
「いえ、そうではなく……そうですね。なんと言いましょうか。僕は、導師イオンです」
「そうだね?」
「だからモースの信仰心を突いた以上、新たな信仰の支えとなる義務があります」
「……そう?」
「ええ。導師とは教団の最高指導者ですから。その権利を享受する以上、責務を負わねばなりません」
まさか僕がそんな風に考えているとは思わなかったらしい。
そこまでしてやる必要ある? という顔になるシンクに苦笑が漏れる。
「シンクも第五師団の師団長として、自分の指揮下で団員に何かあったら責任を取らないといけないでしょう? それと一緒です」
「それは……そうかもしれないけど」
「正直なところ、モースの狂信は僕には理解しがたい。けれど導師である僕はそれを受け止める義務がある……そんなことを考えていただけですよ」
「……イオンはちょっと責任感が強すぎると思う」
「そうでしょうか?」
「うん。でも……そんなイオンが、僕は好きだよ」
口角の端を僅かに上げて、シンクが微笑む。ぎこちなくも柔らかな笑みだった。いつもと違って降ろしている髪がさらりと揺れる。
こんな笑顔を見せてくれるほど距離が近くなったのだと。それほどシンクの情緒が育ってきたのだと思うと胸の内から愛おしさが溢れ出す。
爆発的に広がったその感情に従い、僕はシンクをぎゅうと抱きしめた。
「僕も。僕も大好きですよ。貴方が好きです。とても、とても愛してます」
「な、何さ急に……!」
「思ったことを言ってるだけです。シンク。シンク。僕のサブ。不思議ですね。もう一年近くこうして逢瀬を重ねているというのに、ずっとずっと好きなんです。もっともっと好きになるんです。愛しくて仕方がない。シンクは僕をどうしたいんですか?」
「知るか!」
僕の切なる疑問はいつものようににべもなく切り捨てられる。でもその顔は赤く、照れているのが見て取れた。
ちゅう、とキスをしても嫌がられない。背中に回された腕がおずおずと僕の服を掴む。
何度か角度を変えてキスを重ねる。少年特有の柔らかな唇を僅かに開けて、僕の口づけを一生懸命受け止めてくれることがまた愛しくてたまらない。
先程とは違う意味で眉根を寄せたシンクが僕を見る。何か言いたいのかと口を離せば、シンクはぎゅうと僕の服を握り締めた。
「僕はあんたをどうこうする気なんてない。でも……僕は、あんたのサブだ。だから、その……好きにすればいい」
「僕の好きにしていいんですか?」
「そうだよ。僕の前でくらい、責任も何もかも放り投げて、ただのイオンに戻ればいい。今まで散々してきたみたいに……この身体はもう、イオンのものなんだから」
そう言ってシンクが身体を離すと、その手は彼の服の中に潜り込み、裾を捲り上げて白い肌を晒す。
僅かに赤らんだ頬のまま挑発的に笑う。何とも扇情的なお誘いだ。断る理由など何一つないので、そのままシンクをベッドへと押し倒す。
「そうですね。シンクはもう、僕のものでした」
そう言って首筋に吸い付けば、カラーが小さく金属音を立てた。
唾液をたっぷりと乗せた舌を這わせながら、シンクの服を捲り上げて爪先でなぞる。
譜陣を撫で、つんと立ち上がっている胸の突起を爪先で優しく引っ掻く。
「ぁ、んっ」
シンクの唇から漏れる甘い声も、随分と素直に零れるようになった。
それが嬉しくて、ついつい耳元に唇を寄せて囁いてしまう。
「ふふ。シンクの身体、すっかりエッチになっちゃいましたね」
「誰のせいだよ……っ」
「おや、シンクは僕のものなんですから、構わないでしょう? 僕は僕の手でとってもえっちになったシンクの身体にとても満足していますよ」
ふい、とシンクがそっぽを向いた。恥ずかしいのだろう。
突起を押しつぶしてやればびくりと跳ねる身体。こっちは大変素直でよろしい。
それが可愛くて耳に舌を這わせてやれば、また熱っぽい吐息があふれ出る。
「あ、イオン……ッ、耳、弱いんだってっ」
「ええ、知ってます。好き?」
「んっ、好き……っ、好き、だけど……キス、先にキスして」
「ふふ、可愛い」
可愛いおねだりに応えるために肘を軸に身体を起こし、唇を重ねる。
お望み通り僅かに開いた唇の間に舌を差し込めば、即座に応えた舌が絡み合った。
互いの粘膜をすり合わせる気持ちよさに酔いしれながら、僕の服を掴んでキスに溺れていくシンクに気分が高揚していく。
胸の突起を弄っていた指先を下へ下へと滑らせる。みぞおちをなぞり、ズボンの中へと滑り込ませながら舌を絡める。
「んっ、んんっ、ふ……っ、ぅ、んんっ」
下着越しに撫でてやれば芯を持ち始めているものがゆるゆると勃ち上がっていく。
キスを繰り返すだけでスイッチが入ってしまうせいか、それとも若さのせいか。すぐに勃ち上がり、下着の中で窮屈そうに張り詰めた。
「はっ、ん……っ、いおん」
「シンクのここ、苦しそうですね」
「ん。ズボン、脱ぐから」
「いえ、『そのまま』。今日は僕に可愛がらせてください」
「は? ちょっと、イオン?」
起き上がってズボンを脱ごうとしたシンクはコマンドを下され、そのままぴたりと動きを止める。
にんまりと笑った僕が下着ごとシンクのズボンを引きずり下ろせば、天高く立ち上がったものが外気に晒される。
そして中途半端に開いたままのシンクの足元に膝をつけば、シンクは驚きに目を見開いて咎めるように僕の名前を呼んだ。
「イオン! 何する、ちょっ、待って……っ!」
掌の中で脈打つシンクのものに横から舌を這わせる。
まさか僕が口でするなんて思ってもいなかったのか、動揺を露わにしながらも舌の感触にシンクの腰が跳ね上がった。
それが可愛くて唾液をたっぷりと絡めながらカリ首を舐め、根元をしごいてやる。
僕の手によってすっかり快楽に弱くなったシンクはそれだけで声を上げ、白い肌を戦慄かせていた。
「あっ、ぁあーっ! イオンッ、それだめっ、駄目だって、あっ、ぁ、あっ!」
「駄目? こんなに気持ちよさそうなのに?」
「違うッ、それ、僕がする、ほ……っ、あ、ぁあ、あ……っ、はあ、んっ、ぁああっ!」
フェラは自分がするもので、されるものじゃない。
そう訴えるシンクにちょっと笑いが零れる。どこまでも奉仕精神が根付いているのはサブだからか、はたまた僕が教えたことを忠実に守っているからか。
多分前者だろう。現に駄目だと言いながらシンクは僕のコマンドを守って身体を起こしてこない。
それをいいことに先端を咥えこみ、鈴口を舌先で抉ってやりながら竿部分を擦り上げる。跳ね上げそうになる腰を必死に抑え込んでいるのが震えから伝わってきた。
「いおんっ、ほんと、だめだって……っ! きもちいいっから、出ちゃうっ! 出ちゃう……からっあ!」
「ふふ、僕の口気持ちいいんですね? いいですよ、いっぱい出してください」
「あっ、ぁああっ! ほんと、だめっ、あっ! 口離してっ、おねがっあ、ぁ、あうっん、イオ、あ、ああ……ッ!」
がくがくと腰が震え始めたところで口を離す。本当は飲んでやりたかったが、シンクが滅多に口にしない『お願い』を無視するわけにはいかない。
でもイかせるのはやめない。強弱を付けて痛いくらいに張り詰めたものを上下に擦り上げてやれば、ようやく安堵したらしいシンクの顔が素直に蕩けた。
「あっ、ぁああーーっ! イオン、出したいっ、出させて……っ、ぁ、あっ、ああっ!」
「良いですよ。『イって』」
コマンドで許可を出した瞬間、手の中のものが脈打ち、欲をぶちまけた。
僕の手を汚しながら溢れ出したものは量が多く、濃い。会っていない間もずっと出していなかった弊害だろう。
一人でイけなくなってしまった以上仕方ないんだろうけど、何かシンク一人でも欲を発散させる方法を考えるべきかと考えてしまう。
一度出して冷静になったのか、シンクは息を乱しながらもむくりと起き上がって僕を睨みつけた。
「バカ!」
「んふ」
涙目のシンクに思わず舌なめずりをする。
顔を真っ赤にしながら怒られてもちっとも怖くないんだよなあ。