萌ゆる緑に身を焦がす
シンク
「ほら、シンク。『待って』。まだ動いちゃ駄目です」
「ねえっ……いつ、までっ」
「僕がいいと言うまでです」
一度出させてもらったことで改めて場を仕切り直し、服を脱いだ僕はイオンと向かい合う形で膝立ちになって座っていた。もっと正確に言うのならイオンの膝を跨ぎ、背後に手をついて胸を張る体勢だ。
最初はベッドヘッドに背中を預けるイオンに体重をかけまいと足に力を込めていたのだが、今はそんな余裕もない。
音素灯を消した室内でカラー以外の服をはぎ取った姿をさらし、固く張り詰めたものを見せつけるように足を広げる姿はきっと酷く浅ましい。
けれどイオンは僕の身体を撫でまわすだけで、肝心なところは触ってくれない。
「は……っ、イオン……ッ」
「ふふ、こんなに震えて……きっと第五師団の人達は貴方がこんな淫らな姿をしているなんて知りもしないのでしょうね」
「当たり前だろ! イオン以外に、こんな……っ」
強請るように腰を揺らしても、イオンは自分の腹に当たる僕のものに触れることはない。
ただ内腿を、腰を、みぞおちを、胸の譜陣を、首筋を撫で続ける。火照る身体はいつもより鋭敏で、ただ優しく撫でられるだけでもぞわぞわとしたものが背中を駆け上がる。
その先にあると教え込まれた快感がほしいと、腹の奥が切なく疼く。中に入れてきていたローションが穴から滴り落ち、イオンの寝間着を濡らす。
けれどそれに頓着することなく、イオンは僕の震える内腿を撫でる。愛でるように、何度も。その間で天に向かって勃ち上がっているものを無視して。
「イオン、まだ? も、辛い……ッ」
「そんなに辛いなら体勢変えましょうか?」
「違うって、解ってるくせに……っ!」
半ば睨みつけるようにしてイオンを見ても、イオンはくつくつと喉奥で笑うだけだ。
とろ火にかけられたような欲望がずっと腹の奥で燻っていることを解っていながらあえて見当違いなことを言う。
「イオン、触って……っ、ちゃんと、洗って来たからっ、ローションだって入ってるし、すぐぶちこんでもいいから……っ」
「ふうん? こっちではなく?」
「うあ……っ!」
ぐり、とイオンの指が先走りを零す鈴口を抉るように押しつぶす。
突如与えられた刺激に腰が跳ね上がり、声がひっくり返る。そのまま亀頭ごと包み込み、上下に動く白い指。
ようやく与えられた快感にがくがくと腰が震え、腹の底から湧き出る気持ちよさに声が溢れ出す。
「いお、いおん……っ! それ、それも、きもちいっ、いい……っ!」
「ふふ、ちゃんと気持ちいいって言えてますね。いい子。シンクはどうされるのが好きですか? 『言って』?」
「それ、が、好きっ! 先っぽ、もっと、あ、ぁっ! いじって、強く……っ」
「おねだりできて偉いですね。イきたいです?」
「イきたい……っ、出したいっ、出させて……っ、いおん、しゃせ、したいっ、ぁ、あっ!」
くちくちと小さな音を立てながらイオンの手が僕のものを弄り倒す。それが気持ちよくて天を仰いでのけぞりながら解放を求めた。
僕の好きなところなんて知り尽くしているくせに、イオンは僕に言葉にさせたがる。それでも素直に口にすれば褒められる。その度に僕の頭は溶けていく。
そうなると次に進んで貰える。それを繰り返していく内に僕の頭は馬鹿になって、はしたなくもっと欲しいとねだるだけの馬鹿になり下がってしまう。
「ここと後ろの穴、どっちでイきたいですか?」
「あっ、ぁああーっ! どっちも! どっちも、シてっ、いおんっ、出るっ! 出ちゃう、んっ、んんんっ!」
腹に力を込めて湧き上がる射精感を我慢する。
顔を歪める僕にイオンが笑い、ちゅうとリップ音を立てながら胸の譜陣に口づけられた。
「『イって』」
許可を貰った途端、ぞぞぞとこみ上げる快感が頭の中で弾ける。二度目とは思えない量の精液が勢いよく溢れ出し、イオンの手を汚した。
きゅぅと後ろの穴がすぼまるのを感じながら欲を吐き出した気持ちよさにぼうと天を見上げる。
悪戯にイオンが胸の突起を甘噛みして、射精したばかりで敏感になっている身体がびくりと跳ねた。
「ちゃんと待てましたね。いい子。シンクは本当に僕好みの淫らないい子ですね」
「あ……んんっ!」
イオンの艶めいた声に腰が戦慄くのを感じる。褒められたことにサブの本能が歓喜している。
息を整える間も与えられないまま、イオンに腰を抱き寄せられたかと思えば後ろの穴をなぞる細い指先。
既に慣らしてある穴はあっさりと指を食み、奥へ奥へと呑み込んでいく。
「ぁ、お……っ」
「いやらしい穴ですね。僕の指を喰い締めて離しません。シンクはここでもイきたいんですよね」
わざとらしく問いかけてくるイオンに何度も頷く。そこで快楽を得る術を時間をかけて叩き込まれたせいで、射精したばかりの身体はもう次を求めてる。
腹の中を貫かれ、暴かれ、満たされ、蹂躙される幸福を知ってしまった。だらしなく開きっぱなしになった口から絶え間なく喘ぎ声が零れ落ちる。
ローションを滴らせながらイオンの指が腹の中をぐちゅぐちゅとかき混ぜる。
「あ、ぁああーっ、イオン、いおん、きもちいっ。あ、ぁっ、いい……っ! もっと、あっぁ、ああっ!」
「痛くありませんか?」
「ない、痛くないっ、だからもっと、うあっ」
「ふふ。では、手を離して良いですよ」
ようやく許可が下りて、ずっと背後に伸ばして体重を支えていた手を解放する。
イオンに覆いかぶさるようにしてしがみ付き、そのままキスをすれば褒美だと言わんばかりに口の中をまさぐられた。
ひとしきり口の中を舐めまわした後、零れた唾液を舐めとったイオンが淫靡に笑う。
「射精する間もずっと同じ体勢を維持出来ていましたね。シンクはとても優秀なサブだ。僕の愛しい愛しい、一番のサブ。僕の言いつけを守れるいい子。よく頑張りました。偉いですよ」
降り注ぐ褒め言葉にぶわりと胸の内から幸福感が湧き上がった。本能的な快感に打ち震える。力いっぱい抱き着きたいのを服を握り締めることで我慢する。
きっと今の僕は誰にも見せられないようなだらしない顔をしている。けれどそんな僕を見てイオンは本当に嬉しそうな顔をしていて。
ぐずりと指が押し込まれた。体勢が変わって奥へ奥へと入り込んでくる指がいいところを撫で、押しつぶす。ぞくぞくとした気持ちよさがサブの幸福感と混ざり合う。頭が溶けて馬鹿になる。
「あ、んっあ、ぁあっ。きす、きすして、いおんっ」
「もちろん。いくらでも。ほら、キスしましょう。シンク、『キスして』」
コマンドを聞いた途端食いつくようにイオンと唇を重ねる。舌を絡ませあうと気持ちいいというより心地よくて、ずっとしていたくなる。
かと思えば音を立てて舌先を吸われて頭が痺れる。同時にお腹の中をかき混ぜる指先が増え、どろどろに溶けた穴を余すことなくかき混ぜられる。
絶えることなく与えられる快感が理性をそぎ落としていく。あふれ出るさもしい声は全部イオンの口の中に吸い込まれていく。
「んっ、んんンッ、いお、あ、ふっ、ぁ、あっん、ふぅ……っ」
ずっとこうしていたい。でもこれだけじゃ足りない。
目尻に涙が溜まるのを感じながら湧き上がる矛盾した欲望。名残惜しさを感じながらも唇を離す。混ざり合った唾液が橋を作ってすぐにふつりと切れる。
見下ろせば興奮を露わにしたイオンの顔があって、僕しか知らないドムの顔に腹の中の指をきゅぅと締め付けてしまう。
「あっ」
ずるりと中の指が引き抜かれ、咥えるものがなくなった口が寂しそうにひくついた。
イオンの手は枕元に置かれていたカプセルローションを手に取ると、寝間着の裾をまくり上げて下着をずり下ろす。
緩く勃ち上がっていたものをローションを潰した手でしごいて完全に勃起させると、僕を見上げて笑う。
「欲しい?」
「ほしい……っ」
内腿に当たる硬いものに間髪入れず答えれば、腰を掴まれ宛がわれるもの。
ゆっくりと腰を下ろせば柔らかくなった口はすぐさま先端を呑み込み、中へ中へと受け入れていく。
この隙間を埋められていく瞬間がたまらなく好きだった。
僕の隙間を埋められるのはイオンだけで、イオンを包めるのも自分だけ。そう思うとそれだけで幸福感が湧き上がる。
「あ、ぁ……っ、入ってくる……っ! もっと、イオン、もっと、おくまで……っ、挿れて、はやく……っ!」
「せっかちですね、そんなに欲しかったんですか?」
「ぜんぶ、ぜんぶほしいっ。いおん、ちょうだい、いお、ぉっ!」
視界がひっくり返る。イオンに押し倒されたのだと気付いた時には僕の身体はベッドに横たわり、イオンの膝の上に腰が乗っていた。
そして太ももを抱えこまれたかと思うと、一気に押し込まれたものに腰が密着する。
ずん、と腹の奥まで入り込んできたものに一瞬息が詰まって、射精しないままに軽い絶頂感を味わった。
「ぁ、お……っ」
勝手に震える身体。中のものをぎゅうぎゅうと締め付けるはしたない穴。涙の張った視界で見上げれば、イオンは気持ちよさそうに顔を歪めている。射精を堪えているようだった。
さっきまで欲しい一辺倒だったところに、もっとその顔が見たいという欲求が追加される。
同時に閉じることができなくなった足の間でいつの間にか再度勃起していたものが射精をねだるように脈打っている。
腹の奥の奥まで満たされたことにある程度満足感を覚えて更に別の欲求を抱いたところで、密着した腰が離れていき、また硬いものが突き立てられた。
「あぁっ! ぁ、あ……っ、いおんっ、いお……」
「痛くありませんか?」
「へ、き。へいき。きもちいい、から。いおん、いおんも、きもちよく、なって」
「ふふ。シンクの中、熱くうねって、僕のものを締め付けて……とても気持ちいいですよ。僕のものを美味しそうにしゃぶって、離してくれない。本当にいやらしい穴ですね?」
そう言ってイオンの手が僕の下腹のあたりを撫でた。
ちょうどイオンのものが入っているところだと思うとそれだけで中のものを締め付けてしまう。
「いおんの、イオンのだから。だから、いっぱい」
「ええ、いっしょに気持ちよくなりましょうね」