萌ゆる緑に身を焦がす


 うまく動かない舌を一生懸命動かして、シーツを掴みながらイオンの言葉に何度も頷く。
 好きに動けばいいのに、僕の了承を得たところでイオンは僕の足を抱え直した。
 自然と腰が浮き上がる。苦しい。けどそれ以上に気持ちがいい。もっとイオンが欲しい。もっとイオンに気持ちよくなってほしい。
 頭も体もどろどろに溶けてイオンでいっぱいになっているのに、まだ、足りない。

「動きますよ」
「あっ、ぁああっ! イオンッ、いおっあ、ぁ、あああっ! そこ、そこいいっ! 気持ちいいっ!」

 ゆるゆるとした動きはすぐに待ち望んでいたものに変わる。
 僕の気持ちのいいところを重点的に擦り上げては奥まで突き立てられるものに酔いしれる。
 気持ちいい、と言うとイオンは喜ぶ。だから積極的に口にするようになったのはいつからだったか。

 中を何度も突き上げられる度に幸福感が湧き上がる。ちかちかと視界に火花が散る。
 イオンの荒い息遣いが聞こえる。イオンの開いた唇からちらちらと覗く赤い舌が昂った身体を更に燃え上がらせる。首元から聞こえる金属音すら快感のスパイスになる。

「いおんっ、あっ、ぁ、あああっ! いいっ、あっ、もっと、ぁ、あっぁああっ!」

 もっとシて。
 もっと僕で気持ちよくなって。

 二つの意味を込めたもっとを、イオンは正確に把握している。
 腸壁を擦り上げられる度に痺れるような気持ちよさが込み上げて、限界まで背中を逸らす。
 教え込まれた快感は何度味わっても頭の芯まで溶かされてしまう。
 幸福感と服従心と満足感が混ざって、溶け合って、膨れ上がって。頭がふわふわする。気持ちよくてたまらない。

「あっん、あっ、ぁあっ! いお、あっ、んっ、きもっちいっ! あ、ぁああっ、あっぁ、あああっ」
「シンク、手を……っ」

 ぐち、と音を立てて限界まで中のものを捻じ込まれる。
 完全に理性が削り取られた頭で言われるがままに両手を伸ばせば、導かれた先は痛いくらいに勃ちあがって脈打つ自分のもの。

「ほら、自分でも気持ちよくしましょうね? シンクは良い子だからできますよね」
「ぁ、あ、するっ、する、からっあ」
「ふふ。じゃあ『気持ちよくなって』。いいって言うまで、自分の手で苛めてあげて下さいね」
「わかった、だから、あっ、ぁああぁあーーっ! あっ、あああっ、いおんっ、あっ、きもちいっあ、ぁ、あああっ!」

 イオンに言われるがままに張り詰めたものを慰めるように両手を動かせば、また律動が再開された。
 全身に響く気持ちよさに手が止まりそうになるも、同時にコマンドに従おうとする身体が痛いくらいに自分のものを握り締めて上下に動かす。
 倍増した快感に鞭で打たれたように身体がしなり、飽和した快楽に視界が明滅する。
 けれどやめていいとは言われていない。だからぎこちなくも手は動かし続け、その間もイオンが締め付ける中をごつごつと突き上げる。

「あっ、ぁあああっ! イオンッ、出るっ、出ちゃう! 出るっから、ァ! あっ、ぁあああーーっ! あぁああぁあっ!」
「ふふ、『だぁめ』」
「あ、あ、ぁ、あっ! むりっ! くるっ、きちゃうっ! ぁ、ああぁああーーっ! あぁああぁあーーっ!!」

 身体に電流でも流れてるんじゃないかってくらい気持ちよさが湧き上がって止まらない。
 目を見開きながら腰をがくがくと震わせて、こみ上げる射精感を必死に我慢して、それでもじわじわと膨れ上がる絶頂感に涙があふれて。

「だめっ、出るっ! イくっ! あっ、ぁあああっ!! くるっ、あ、ぁっああああ! きちゃっ、ぁ……っ! ぁああぁああぁあーーっ!!」

 ごちゅん、と抉るように良いところを押しつぶされた瞬間、膨れ上がった絶頂感が弾けた。
 限界まで喉を震わせ、悲鳴じみた嬌声を上げながらイき果てる。同時にイオンのものがずるりと引き抜かれた。しかし掌の中のものは射精することなく脈打っている。
 射精を伴わない絶頂はイオンに教えられた快感の一つだが、射精した時と違ってしばらく頭がふわふわしたまま帰ってこれない。
 身体に残る絶頂の余韻に、自分の意思とは関係なく身体が小さく跳ねていた。

「あ……っ、いお……っ、あ、抜いちゃ……やだ、あ」
「ああ、すみません。でもまだシンクを味わい足りないので……しかしコマンド無しだと完全にメスイキするようになっちゃいましたね? ふふ、ふふふ。なんてえっちな身体でしょうか。たまりませんね。可愛いシンク。僕のシンク。なんていやらしいんでしょう……!」

 興奮に濡れたイオンの声が頭に響く。かけられた言葉は蔑むものではなく、イオンによって僕の身体が作り替えられたことの証明だ。
 卑猥な褒め言葉にふわふわとした頭が更なる多幸感に包まれる。そろそろサブスペースに入りそうだった。

 イくのと同時に中のものが抜かれたせいで、すぼんだ口がひくついている。
 イオンは僕の身体をひっくり返すと、腰を抱き寄せてまだ射精していないものを押し付けて来る。

「ほら、まだ手は止めていいって言ってませんよ」
「あ、ごめ……んぁ、あ、あぁ……っ」

 頭をベッドに突っ伏したまま膝をつき、高々と持ち上げた腰がまた密着する。
 ずぶずぶと入ってくるものがまた隙間を埋めていく幸福感。多幸感に包まれながら震える指先で必死に自らを慰める。
 これ以上ない程に敏感になっている身体は、拙い自分の指の動きでもしっかりと快楽の端を掴んでいる。
 背後からのしかかってきたイオンがぐりぐりと腰を押し付けてくるのと同時に奥が抉られて、喉から絞り出されるように喘ぎ声が溢れた。

「あ……ぃお、ぁ、あー……っ、あっ、ぁ」
「はあ。好きです、シンク。愛してます。シンク、シンク。大好き。愛してますよ。誰よりも。貴方だけを」

 熱っぽい口調で囁かれる言葉にぞわぞわと腰から甘い痺れが駆け上がる。
 湧き上がる多幸感が止まらない。あと少しあれば弾ける。弾けてしまう。
 ひぃふぅと息をしながら頭の中に注ぎ込まれる声に脳が蕩けそうになる。ちゅう、とうなじに口づけられた。チャリ、とカラーの金具が音を立てる。

「好きです、シンク。シンク。シンク、んっ。とても、貴方が好きなんです。愛してる」
「あ……」

 箍が外れた。
 切なくも色めいた言葉を皮切りに、先ほどとは比にならないレベルでぶわりと広がる幸福感。
 幸福一色に染まった頭は最早まともな言語回路すら捨てて、支配される悦びに耽溺する。
 すっかり落ち切った僕の背後でイオンが密やかに笑うと、そのまま律動を再開した。

「あっ、ぁああぁあーーっ! あっぁああっ、あっんっあっ、ぁあああ! もっと、あっ、きもひっの、もっと……っ!」
「っふ、ふふ。トンじゃってますね、可愛い。可愛いですシンク。もっと、落ちて。僕だけのものになって」

 乱れた息遣いの合間に挟まれる言葉に脳を揺さぶられながら、お腹の奥の奥まで突き上げられる。
 蕩けた頭でもイオンの感情だけは正確に受け取っていて、ひたすら喉を鳴らしながら湧き上がる快感に身体を跳ねさせる。
 幸福感と快感が混ざり合って、心も体もドロドロに溶かされて、右も左も上も下もない。ただ気持ちがいい。ずっと浸っていたい。

「うあっ、ぁ、あああっ! いおんっ、ぃっお、あっぁあああっ! らしてっ、なか、だひてぇ……っ! あっ、ぁああっ! そこ、そこしゅきっ、もっと、あっ、ぁあああっ!」
「ええ、いっぱい。出してあげます……っ! シンクは中に出されるの、大好きですもんねっ」
「うんっ、うんっ! あ、ぁああぁあ〜〜っ! あっいい、いいっんっ、あっ、ぁあああっ! すきっ、いっぱい、あっ、ぁあああっ!」

 卑猥な水音が耳朶を打つ。腰骨を抉るように突き上げられる度に背中がしなる。
 自分のものを慰める手が止まらない。だって止まっていいって言われてない。
 頭の天辺から足のつま先までイオンに染め上げられる幸福に浸りながら、湧き上がる快感が弾ける瞬間を今か今かと待っている。

「はぁ……っ、シンク、なか、出しますね……っ! 全部、受け止めて……っ」
「あっ、ぁっああっ! あっん、あっ、いおっ、お、んっ! あっ、あぁああっ、くるっあっ、ぃっあ、ぁ、あああっ!」

 腰を打ち付けるリズムが早くなる。揺さぶられる度に溢れる嬌声を部屋に響かせ、軋むベッドも気にせず肌を打ち付けられる。
 どこもかしこもべたべたに汚しながら、額をベッドに押し付けてこみ上げる射精感に息を詰める。
 背後からぎゅう、と抱きしめられた。

「『イって』」
「〜〜〜〜っ!!」

 びゅる、と腹の底からせり上がる精液をぶちまけた。開いた口から舌を突き出しながらも音はない。声にならない悲鳴が喉を震わせる。
 それと同時に注ぎ込まれる熱いもの。きつく中のものを締め付けながら、その全てを余さず腹の中で受け止める。
 みっちりと埋まっているお腹の中。僅かに残った隙間すら埋めていくどろりとした熱。文字通り満たされていくことに恍惚とする。

 びくんびくんと震える身体は絶頂感がなかなか抜けず、強張ったまま戻らない。
 イオンの手に誘導され、自分のものを握っていた手がそっとほどかれた。

「い、お……っあ、ん」
「ふふ、トンじゃってるシンクも可愛いです。シンク、ほら、こっち向いて」

 ずるりと中のものが抜かれる。寂しい。嫌だ。抜かないで。
 そう言う間もなく身体がひっくり返されて、息を乱したイオンが覆いかぶさってくるせいで動けなくなる。
 互いに乱れた息のまま唇を重ねて、舌を絡め合って。その間も身体をまさぐるイオンの手が気持ちよくてしがみつく。

「いお、あっ、もっと、んっ」
「もっと?」
「んっ、もっと、あ、ぁ、ほし、んんっ」

 唇を重ねる合間にもっと欲しいと言えば、イオンの舌が僕の耳朶を舐めた。
 肌を撫でていた手が萎えかけたものをしごきあげる。途端に腰が跳ね上がり、喘ぐ僕をイオンが舌なめずりをしながら見下ろしている。

「ふふ。貪欲なシンクも可愛くて好きですよ。ほら、気持ちいいって言って」
「あ、ぁっあ、きもひっん、ぁ、あああ……っ!」

 違う。なか、中に欲しい。
 そう言いたいのに口からひっきりなしに漏れる嬌声が邪魔をする。

「んっ、ぁ、あああっ。いおんっ、いお、あ、ぁああっ! いいっきもちいっから、あっ、もっと……っ!」
「大丈夫。シンクが満足できるように、いーっぱい気持ちよくしてあげますからね」

 本能のままに縋りつく僕にイオンは愉しそうに囁き、もう一度キスをした。

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