2026年キスの日SS詰め合わせ(敬愛と執着)


「たまにはさ」
「はい」
「お前からもキスがほしい」
「ホホウッ!?」
「新しい鳴き声だね、全部で何種類あるわけ?」
「し、新規ご登録をお待ちください……?」

 シンクとお付き合いを始め、彼の部屋にお邪魔するようになった。
 未だ緊張はぬぐえないが、それでも敬語を外して話すことも、名前で呼ぶことも慣れてきたように思う。
 流石に肌を重ねるのはもう少し待ってほしいが、そこはシンクが私のペースに合わせてくれると言ったのでお言葉に甘えている。
 そんな中、互いにベッドの端に並んで腰かけ、寝る前の雑談に花を咲かせていた時に言われた台詞に思わず飛び上がってしまった。

「お前がボクに言われて付き合ったことは理解しているけどね、一方的に愛情表現するんじゃなくて、たまには返して欲しいこともある」
「それは……はい、ごもっともなことかと」
「呼んでるのは僕だけど、泊まりに来るたびに生殺しに耐えてる健気な恋人にご褒美くらいあってもいいんじゃないの」
「おっふ」

 それを言われちゃあ待ってもらってる私は何も言い返せないんだよなァ!
 シンクが好きだからというよりは殺さないでほしいから付き合うという選択をしたというのも罪悪感を刺激する。
 どんな形であれ好意があるのは間違いないけれど、未だにこれが恋かどうかは自分でも解らないのだ。

「えっと……それじゃあ。失礼します」

 とはいえ、シンクからのおねだり? 要求? 脅迫? を無視するわけにはいかない。出来なこともないが、後からねちねち言われるだろう。
 それは避けたいのでベッドから降りて、シンクの前に跪いた。いつもは黒手袋に覆われている手を取り、その甲に口づける。
 おずおずとシンクを見上げれば、片眉を上げたシンクが私を見下ろしていた。

「あのう」
「……お前の場合、わざとってわけじゃないんだよね。解ってるからこそ腹が立つというか……まあ、お前らしいっちゃらしいんだけどさ」
「えっ」

 言われた通りにキスをしたら腹が立つと言われた場合、どうしたらいいんだろう。
 ため息をついたシンクに固まっていたら、腕を掴まれたかと思うと思い切り引き寄せられた。
 寝技の要領でそのままベッドへと押し倒されたかと思うと、噛みつくようなキスが首筋へと落ちてくる。
 ぬるりと舌が這う感触に身体が跳ねたが、それもあっさりと押さえつけられてしまう。

「師団長!?」
「お前が悪い」
「何でェッ!?」

 何とも不機嫌な声で言われてこのまま襲われるのかと思ったが、シンクはもう一度ため息をついてからごろりと横に転がった。
 完全に不貞腐れている様子に何か間違ったことは解ったものの、何が間違っているかが解らない。どうしろっていうんだ。

「あの、シンク……?」
「いい。気長に待つさ。お前はもう、僕のものなんだから」

 ふん、と鼻を鳴らしてシンクが笑う。
 逃がすつもりはないという主張に、私の心臓が小さく跳ねた。


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