2026年キスの日SS詰め合わせ(愛情と思慕と愛玩と)
「ん。こんなもんか」
「んー……むう」
花遊びの後、タッピングを終えたシンクがぺろりと舌なめずりをするのをぽやぽやした頭で見上げる。唇から覗く赤い舌が妙に艶めかしく見えた。
時間をかけてたっぷりと交わされた口づけのお陰で満足感と幸福感に包まれた身体はそのまま寝てしまいそうだ。
けれど仕事に戻らなくちゃならない。理解している筈なのに、馬鹿になった頭はもっと別のことを考えている。
「ん、しんくぅ」
「何? まだ足りないの?」
「んん……しんくが欲しい」
「は……?」
「ちゅう。シンクとちゅうしたい」
勢いをつけて身体を起こし、私の上に跨っていたシンクをそのまま押し倒す。
驚いたように目を瞬かせているシンクになんとなく満足感を覚えてへらりと笑う。
そしてそっと唇を重ねた。
「ん……」
ちゅ、とリップ音を立ててすぐに離す。でも足りなくて何度も何度も唇を押し付ける。
タッピングじゃなくて、キスがしたい。この柔らかな唇をもっと堪能したい。もっとシンクを感じたい。
互いの吐息を食むような、何の意味もないキスを繰り返す。栄養なんて取れやしない。自己満足以外の何物でもない。
けれどそれが、とても気持ちがよくてやめられない。
「はあ……」
角度を変えながら何度も唇を押し付けた。シンクは私にされるがままで、それが余計に私の身勝手の背中を押した。
投げ出されていたシンクの掌に自分の手を重ねて、指を絡めて、握りしめて。
タッピングの時よりも余程貪るようにひたすらに唇を押し付ける。
「シンク、しんく。しんくも、ちゅう」
シンクからもしてほしい。
散々自分からキスをして、拒否されないのをいいことにそんな愚かなことを願い出る。
見下ろしたシンクの顔からはとっくに驚きが引いていたけれど、私が強請ったのを皮切りにまたぐるりと視界がひっくり返ってシンクに押し倒される。
キスして欲しい。子供が抱っこをねだるみたいに両手を伸ばせば、シンクの両手が私の頬を包みこむ。
近づいてくる顔にキスをして貰えると思った。が。
「いった!」
「調子に乗るんじゃないよ」
がぶりと鼻筋に噛みつかれ、私は一気に涙目になる。
見上げればぺろりと舌を出しているシンクが居て、キスしてもらえなかったことに悲しくなる。
「うう、意地悪……」
「好き勝手し過ぎなんだよ。僕は先に戻るから、酔いを醒ましてから来るんだね」
噛まれた鼻を押さえて涙目になる私にシンクは呆れたようにぼやいて身体を起こす。
ひん、と鳴いた私の頭に最後にキスを落として、そのまま部屋を出て行く背中を見送った。唇は駄目だけど、頭は良かったらしい。
私はキスしてもらった頭にそっと触れながらふへへと笑ってベッドの上で転がりまわる。
一人置いていかれた部屋で、シンクの唇が私の髪に触れたことに一人でにやけながら喜んでいた。
まあ、三十分後に平謝りする羽目になるんだけどね。
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