2026年キスの日SS詰め合わせ(誘惑)



「こんなところまで散歩ですか、導師イオン」
「その……はい」
「導師」
「散歩です、散歩」
「導師イオン」
「……ハイ」

 最近シンクと会えてない。
 それが寂しくて日課の散歩という名目の元、ついつい神託の盾の方まで足を伸ばしていたら偶然シンクと遭遇した。
 本当の本当に偶然なのだが、むしろそれを狙っていたのだが、シンクに言葉少なに責め立てられ、思わず身をちぢこめる。
 解ってるよ。導師なら大人しくしてろって言いたいんだろう。でも会いたかったんだもん……。

「お前等も止めろよ」
「一応名目上は散歩だから……」

 シンクが呆れたようにため息をついて背後に控えている導師守護役達に注意を飛ばす。
 アニスが苦笑交じりに答えたが、僕の思惑を理解していながら止めずについてきてくれたのは間違いない。
 だから背中で守護役達を庇い、ぷうと頬を膨らませてシンクを見る。

「守護役達は悪くありません。それに僕がどこを散歩しようが別にいいじゃないですか」
「導師」
「神託の盾本部は危険な場所ではないでしょう?」
「イオン」
「……解ってます」

 咎めるように名前を呼ばれ、そっと視線を伏せる。
 反改革派と呼ばれる者達の存在もある以上、人気のない場所に行くべきではないとシンクは言っているのだ。
 それでもやっぱり反感を覚えてしまう。良いじゃないか。守護役達を撒いて脱走したわけでもあるまいに。
 そんな僕の反感を感じ取ったのか、シンクは無言で僕の手を取って懇願するように言った。

「また、時間作って泊まりに行く。だから自分の安全を第一に考えてほしい」
「……すみません」

 そこまで言われてしまえば流石にこれ以上の我が儘は言えず、素直に謝った。
 どうやら僕とシンクの間で覚えている危機感に随分と差があるらしい、と流石に察したので。
 僕そんなに危険視されてるのか……もうちょっと考えなきゃ駄目だな……。

「わざわざこっちの方まで来なくたって僕から会いに行くから」
「……解りました。大人しく待ってます。だから」

 そこで言葉を切って、シンクの手を掴んで引き寄せる。
 よろめくように近づいてきた身体を受け止め、守護役達には聞こえないよう耳元でそっと囁いた。

「シンクが来た時は、いっぱい愛させてください」

 ちゅっとわざとリップ音を立ててキスを残し、身体を離す。
 見れば頬を赤らめて口をへの字にしたシンクがこっちを見ていた。仮面の奥では僕を睨みつけているのかもしれない。
 目元を赤らめてこちらを睨む緑の瞳を幻視していると、今度はシンクの方から身を寄せてくる。
 僕の真似をするように耳元へと唇を寄せ、腰を疼かせるような低い声で囁いた。

「期待してる」

 ちゅっとリップ音を立てて離れていくところまでトレースして離れていくシンク。
 どうだと言わんばかりにふふんと笑うシンクにぞくぞくとした。

「そこまで言われては仕方ありませんね……寝かせませんから覚悟しておいてくださいね」
「馬鹿? 寝ないとイオンがもたないだろ。ちゃんと寝ろ」
「はい……」

 なんとも熱烈なお誘いにやる気になったのも束の間、またシンクに叱られて僕はしょぼんと肩を落とした。
 くそー。今度泊まりに来た時はもう嫌だって言うくらいひんひん言わせてやる。
 ……うん? いつも通りだな????


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