ゆっくりと進むツアーの中で2
「食べる?」
新幹線で前の座席から差し出された手には名古屋の有名なお菓子が乗っていた。
「ありがとうございます。」
それを受けとり、口の中へ入れれば、差し出したエリーさんが白い歯を出して笑った。
「これも食べなよ。」
通路を挟んだ席からお菓子を出してきたのは今市さんで、同じように頂くと、満足そうに「臣もいる?」と隣に座る登坂さんにお菓子を差し出していた。
相変わらずエリーさんや今市さんはすごく優しくて、ライブ中も時々目を合わせて、笑ってくれる。
それだけで私の声も少し弾んで、よく出るようになる。
「もうちょっと食べたほうがいいよ。」
後ろからかけられた声に少し心臓が跳ねる。
出発してから、配布されたおにぎりを食べ終わりごみを片付けていた時だ。
いつの間にいたのだろうか、ちょっと詰めてと深く帽子を被った片岡さんが私を見て微笑んでいる。
空いていた席に詰めると、隣に片岡さんが座ってくる。
「はい、これも飲んで。」
あまりにも驚いて、返答に困っている私にプロテインを私へと差し出す片岡さん。
「ありがとうございます。」
とりあえず受け取ると、そのまま片岡さんは腕を組んで深く座りなおした。
「片岡さん?」
「体重、軽すぎ。」
そうか、リーダーならメンバーの体重を聞くのも簡単だろう。
毎回、公演前に測定を指示されていたのも、片岡さんだったのか。と納得する。
それでも、一応10代の女の子だ、片岡さんに体重を知られていることに、もやりと嫌な気持ちが浮かぶ。
「すみません。」
「体重、聞いて悪かったけど。公演回数重ねるたびに、ちょっとずつ辛そうになってたから。」
小さい溜息とともに、吐き出された言葉にチクリと胸を刺される。
「まあ、とりあえず。それちゃんと飲んで。」
もう一度ため息を吐いて片岡さんは彼の席へと戻っていった。
後に残ったのは、プロテインが満たされた容器とため息だけだった。