全員にバスタオルを渡し、順に髪の毛を乾かしてあげると、徐々にみんなの顔に安堵が戻っていく。
ありすは、ぶかぶかのTシャツとバスタオルに包まれた4人をリビングのソファーに座らせた。

「いい? みんなはこの部屋で静かに待っててね」
力強く頷く4人をリビングに残し、静かになった廊下からキッチンへの扉をそっと開けると。

「…来客、ですか?」
カウンターの沖矢さんと目があう。
「えぇ、子ども達が雨宿りに来たので応接間に通しました。彼らのことは私が見てますので」
「そうですか、ではよろしくお願いします」

沖矢さんがそう告げると、3人は再び話し合いに戻ったようだった。
作戦の内容が気になったが、詮索は諦めて、手早く人数分のココアを作ると応接間へと戻る。
扉を開けると4人はおとなしく宿題をはじめたようで、ありすは小さく安堵した。

「なぁなぁ光彦、消しゴム貸してくれよ」
「元太君、また無くしたんですか…?」

部屋の隅に腰かけて、手元のマグカップから湯気が白くゆらゆらと揺れる。
その奥で子ども達が小声で漢字ドリルと格闘しているのを、ありすはぼんやりと眺めていた。


今日のコナン君は、ずっと”警護対象者”について喋ろうとしなかった。
彼女が ”少女” なのか ”女性” なのか… 触れないように細心の注意を払っていた。

…私がどこまで知っているのか、探っていた。

それは私が話し合いに同席するうえで必要な情報開示なのだろうけど、
私がベルツリー急行に搭乗しないということは、即ち、”話し合いに同席しない” 選択肢も与えられているということ。



きっと世の中には、適切な距離というものがあるとおもう。
不必要に彼女の事情に踏み込むのは、気が進まない。


そう考えると、この状況に助けられているのは、他でもない私なのかもしれない。



 
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