「あー、雨降ってるのかぁ…」
バイト終わり、ちらと外を覗くと、外は小雨が降っていた。
黒猫は夢を見る 6
杏は私服に着替え、更衣室から出る。
裏口の扉を開くと、雨は心なしか強くなっているような気がして、思わず立ち止まった。
「どうしよう、走って帰るしかないかなぁ…」
あいにく傘は持っていない。しょうがない、と杏が心を決めた時。
「杏ちゃん」
声のする方に振り向くが、誰もいない。
そのままキョロキョロと周りを見回したとき。
「下だよ、下」
折り畳み傘とれいくんが、足元でちょこんと座っていた。
「れいくん…もしかして持ってきてくれたの?」
杏がしゃがみ込んで訊くと、れいくんはにゃあ、と鳴いた。
そっか、ありがとう。と撫でると、れいくんの毛から水が滴る。
杏はあわててバッグからタオルを取り出すと、れいくんをわしゃわしゃと拭き始めた。
「れいくん、帰ろっか」
「…にゃあ」
れいくんを抱きかかえて雨の中を歩く。
「なんか、雨の匂いがするね…」
「杏ちゃんからは、美味しそうな匂いがするよ」
「美味しそうな匂い?…ああ、余ったパン貰ってきたんだ」
「パン、美味しそうだよね」
「…れいくん、食べちゃだめだよ?」
杏が釘を差すと、れいくんは…にゃあ。と小さく鳴いた。
prev next || Text || Top
ALICE+