バイト終わり。米花公園のベンチに座ってボーッと空を見上げていると。


「杏」


空から突然猫が降ってきた。


 黒猫は夢を見る



「ね、猫!・・・赤井さん?」


猫に伸びる手を辿ると、そこには知ってる顔、赤井さんがいた。


「バイト先にいったら、ここにいると聞いてな」

「わー、カワイイ黒猫!」


手を伸ばすと黒猫は赤井の手からすり抜けて、杏の膝の上にちょこんと座った。
真っ黒でつやつやな毛並みは、思わず触りたくなる程綺麗でウズウズする。


「し、失礼しまーす・・・」


恐る恐る頭を撫でると手に擦り寄ってくる愛嬌たっぷりの姿。杏はカワイイー!!と破顔する。


「この子、赤井さんの猫ちゃん?」

「いや、急遽預かることになったんだが...杏に暫く頼めないか?」

「え、私!?」

「俺が普段家を空けてること知ってるだろ?」

「えぇ、まぁ・・・」


赤井さんは私のご近所さんで、始めはバイト先のパン屋で知り合った。赤井さんが録な物食べてないと聞いてからは、時々おかずをお裾分けする仲だけど...
とにかく赤井さんは家にいない。

うーん。どうしよう、考えながら猫ちゃんを見ると。
クルクルのおめめでこっち見てる!どうしよう、この子かわいい!かわいすぎる!!


「杏が難しいなら他を・・・「わ、わたしが!!」

「ん?」

「・・・赤井さんがどうしてもって言うなら、私が預かってもいいよ」

意気込みが強すぎて、自分でもちょっとびっくりした。
チラリと赤井さんを覗くと、不思議そうな顔をしている。杏はなんだか恥ずかしくてすねてみたけれど、赤井さんは特に気にしていないようだ。


「そりゃ助かった。餌は特別用意しなくても、人間と同じものを食べるから気にするな。
まぁ、ガキの子守りでも頼まれたと思ってくれ」


ガキと呼ばれて、猫ちゃんが唸った、ような気がした。
それを聞いてか聞かずか赤井さんが笑う。
それじゃあ、頼んだ。と赤井が立ち去りそうになって、杏は慌てて引き留めた。


「この子の、名前は・・・?」

振り返った赤井さんは、少し考えるような仕草をする。

「俺は、ゼロと呼んでいたが・・・何と呼ぶべきかはその子に訊いてくれ」

じゃあ。と言うと、赤井さんは去っていった。



「訊いてって言われても、ねぇ?」

困り顔の杏に、黒猫は目を細めて、ニャアと鳴いた。




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