最近、クラスメイト間での話題が一つしかないのでは。と綾瀬は思った。

「Playmakerって…」
「あ~かっこいいなぁPlaymakerさん!」
「あいつって本当に男なのか?女だったりして」

席に座ってボーっとしているだけでも聞こえてくる話題。
おそらくクラスメイトだけでなく、世間も注目している一人の人物。

(皆Playmakerの話ばっかだねぇ)
「(そうだねぇ…)」

数日前、ハノイの騎士というハッカー集団がLINKVRAINSに向けて大規模な攻撃をおこなった。
攻撃によって多くのアカウントが消失。LINKVRAINSというサービス自体が崩壊寸前にまで追い込まれた。
そんな危機的状況の中、突然現れたのがPlaymakerというアバターだった。
Playmakerはハノイの騎士とデュエルを行いこれに勝利し、LINKVRAINSは崩壊の危機を免れた。

(あの一件でLINKVRAINSでは英雄扱い…一気に話題持ってたよねぇ)
「(たしかに…ただ、攻撃されてから動画途絶えて何があったかよく分からないけどね)」
(本当ね)

あの日、綾瀬が観ていたチャンネルは攻撃によって放送が中止となり、観ることができなかった。
一部の有志が独自で配信しているものを観ることが出来たが、殆どがデュエルの一部しか取られておらず詳しい部分は謎のままだった。

「(サーフボードに乗って移動しながらデュエルしてた位しか分からなかったし。あれもデュエルって事でいいのかな?)」
(…さぁね)

綾瀬は何かを思い出したのかタブレット端末でブラウザを開く。
検索したのはLINKVRAINSがハノイの騎士に攻撃された理由について。
世の中はPlaymakerでもちきりだが、ネットワーク分野の人間の間ではまた違う話が話題となっていた。
それは、ハノイの騎士に攻撃された日、LINKVRAINSの開発元であるSOLテクノロジー社がLINKVRAINS内で大規模なスキャンが行われていたということである。
スキャン中はセキュリティ性能が下がるらしく、ハノイの騎士はそれを利用しての攻撃を仕掛けた。
それが今回の事件に繋がったのだった。

「(一時的にメンテナンス状態にしてからのスキャンでもありだったような気もするんだけど…本当に緊急だったのかな?)」
(人口が多いゲームだから、出来る限りユーザーにできるように配慮したんじゃない。それに、開発元は大手のSOLテクノロジー社だから、サイレントメンテしてるでしょ)
「(なのかな…?でも、わざわざ全域スキャンするなんて)」
(…それにしても、本当に綾瀬はこういう系の話題しか興味ないよね。Playmakerへの興味は薄いというか)
「(…別に、全く興味ないわけではないんだけど。面白そうな話がこっち系だとすぐに流れちゃうといいますか…)」
(まぁ、ずっと前からわかってるから何も言わないけどさ)

斗亜の話を聞きながら検索を続けていると、ある記事を発見した。
内容は「SOLテクノロジー社の大規模スキャンはとあるプログラムを見つける為だった」というものだった。
そのプログラムは既に実行されており、詳しい挙動は分からないが様々なネットワークを移動するものであると書かれていた。

「プログラムが、逃げる…?」
(ウィルスとか?)
「(いや、ウィルスならネットワークを通して端末に感染はするけど、自分で逃げたりはしないでしょ?)」
(…たしかに)
「(自分で移動するプログラムなんて…AIプログラムとかだったらできそうだけど)」
(…)

もっと詳しく調べようと思った時、次の授業開始のチャイムが鳴った。
綾瀬は一旦ブラウザを閉じる。
授業中に開いてもバレるわけではないが、教員に目をつけられたくはないので真面目に授業を受けている。

「(でも、本当にAIプログラムが勝手に動いてたとしたら…)」
(…あーあ)

頭のなかで考えを深めている綾瀬に斗亜は溜息をついた。

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