「…ここに1つ変数が必要で…」
「うん…」
「ここのループ処理の理由分かる?」
「大丈夫」
「了解。だと次のこの関数がね…」

放課後、綾瀬は葵と街中のカフェにいた。
2人の席にはそれぞれのタブレット端末と授業のプリント、そして頼んだドリンクとケーキが置いてある。
今日はデュエル部が休みということで2人で帰ることになったのだが、葵が授業でわかりづらい部分があったらしく、プログラミングができる綾瀬が教えるということになった。

「…こんな感じなプログラムなんだけど、まだわかってない所ある?」
「ううん、ちゃんと理解できたよ。ありがとう」
「よかった~わかりづらい説明してたかとちょっと心配だったよ」
「そんなことないよ、大分分かりやすかったから」

2人は会話をしながらタブレット端末とプリントを鞄にしまう。
そして、頼んだケーキとドリンクを口にし始めた。
綾瀬はケーキの甘さに自然に頬が緩んでいた。

「…ふふっ」
「ん?どうしたの葵?」
「いや、綾瀬美味しそうに食べるなって思って」
「えっ、変な顔してた!?」
「そんなことないよ」
「そ、そう…?」

綾瀬は表情に少し気をつけながら外を見るると、近くの建物に設置してあるスクリーンが目に入った。
スクリーンにはバラエティ番組が映し出されており、「謎のアバターPlaymakerとは」という字幕が見えた。

「…Playmakerか」
「綾瀬?」
「あの建物のスクリーンにPlaymakerって文字が見えただけ。最近、あの話題ばっかりだから凄いなぁって」
「あぁ…Playmakerね」
「うん。と言っても、ハノイの騎士を倒した人って位しか知らないけれど」
「そう…」

葵の視線が少し下に落ちる。
綾瀬は葵の様子を見て「あまり聞きたくない話題だったのでは?」と感じた。
それもそうであろう。葵のアバター、ブルーエンジェルにとってPlaymakerは、今まで自分が浴びていたスポットライトを横取りしたような存在であるのだから。
今まで地道に築き上げてきたであろう注目を突然出てきた名もないアバターに取られてしまうのはとても悔しいことである。

「…ごめんね。あんまりいい気分しなかったよね?」
「えっ、ううん。そういう訳じゃないの」
「そう?」
「うん。色々と不思議な点が多かったからそこが気になっただけ」
「不思議な点?」

葵があげたPlaymakerの不思議な点は、
1.使用するデッキがサイバース族という聞いたことがない種族のカードで組まれていること。
2.スキルが、データの竜巻の中に飛び込んで新しいカードを生成すること。
という事だった。
更に、データの竜巻はPlaymakerが使用してから現在まで一度もLINKVRAINSで発生していないということだった。

「データの竜巻…なんだろ、ランダムに現れるカードのデータベースみたいなものなのかな?」
「…でも、そんなシステムSOLテクノロジーは作らないと思うの」
「さすがに実装するなら事前にお知らせしそうだもんね」
「…本当に不思議な事ばかりだわ」

葵がストローを回してドリンクを混ぜる。
中の氷は溶けて少し小さくなっていた。

「うん…でも、Playmakerが何者であれ、私は葵がなんともなくて本当に良かったっても思ってるよ」
「えっ」
「だって、殆どのアバターが消失とかLINKVRAINSが崩壊寸前だとか、本当に心配だった」
「…ごめん」
「葵が謝ることなんてなにもないよ!それに、無事で帰ってきてこうして今ケーキ食べているんだし。大丈夫だよ!」
「…そうだね」
「うん」

ニコニコと笑う綾瀬の表情につられ葵は笑う。
"ちゃんと心配してくれる友達がいるのはちょっと安心できる"
そう思いながら。


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