「遊作。あの女の子知ってるのか?」
綾瀬の去った後、青年はベンチに座っていた彼、遊作に話しかけた。
「え…?」
「なんでそこで考えるんだよ…」
「いや、見覚えがあるんだが思い出せないんだ」
「同じ制服だったからどっかで見たことがあるんじゃないか?」
遊作は顎に手を当てて考える。
確かに遊作には#naem2#を見た覚えがあり、見ただけではなく何か会話をしていたような記憶があった。
「(話して、何かを渡されたような…)」
遊作は自分の鞄の中を見た。
中には授業で使う物、他にはデッキケースなどが入っている。
手を入れて漁っていると、タブレット用のペンが出てきた。
その時、遊作は綾瀬がこのペンを渡してくれた事を思い出した。
「あ…あの時か」
「あの時?」
「俺が寝ていた時に落としたこのペンを拾って渡してくれたんだ」
「(寝てたって…)そうだったのか。じゃあ同じクラスの子だったのか」
「たしか…ただ、あの時は寝起きだったからあまり覚えていないんだ」
「お礼とかは言ったのか?」
「…多分言ってない」
「おいおい、折角拾ってくれたのに…」
「仕方ないだろ。寝起きだったんだから」
遊作はそう言い返すが、たしかにお礼を言わなかったのは悪かったと思った。
「まぁ、さっきお前が見てたのもあってあの子かなりびっくりしてたみたいだし、一度そのことの説明も含めて話しかけてみたらどうだ?」
「えっ」
「流石にクラスメイト、しかも女の子に苦手な印象で受け取られたらまずいだろ。それに、お礼の言葉くらいは必要だと思うぞ」
「…」
「…やれるかどうかは遊作次第だが、とりあえずはお礼を言うだけだ。ナンパするわけじゃない」
「わかってるよ、草薙さん」
遊作は草薙にそう言うと、空を見上げた。
お礼を言わなければならないのは分かっているので、話す機会があれば言って置かなければいけないと思った。
しかしもう一つ、あの時綾瀬が呟いていた言葉が少し引っかかっていた。
「(AIプログラムなのかって…何を考えたいたんだあいつ)」
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