翌日、教室に着いた綾瀬は昨日決めた事を実行に移した。
やることはただ一つ、彼のことを気にしないように意識する事。
1.気になりそうになっても、こちらからは見ない。
2.見られていたとしてもそれは自分ではなく、「自分の視線の先にいる何かを見ている」と思いこむ。
これらを今日意識して過ごしてみることにした。

(藤木遊作という人間の存在を失くす勢いで意識するんだよ!!)
「(それはやりすぎじゃない?)」
(だってそれくらいしないと綾瀬きっとまた気にしちゃうと思うんだよね)
「(だとしても、存在自体を意識しないはそれはそれで酷い気がして)」

斗亜のアドバイスにツッコミを入れつつ、タブレット端末を取り出そうと鞄を開けた。
そこには、いつも持ってくる勉強道具の他に以前買った技術本が入っていた。
空き時間に読み進めようと思っていたが、ここ数日の事があり全く読み進められなかった。

「(今日こそ読み進めたいな。まだ半分しか読めてないし…)」

そんなことを思いながら、タブレット端末を取り出す。
電源を入れてSNSのアプリを開く。
タイムラインには好きなアニメやゲーム、またはネットワーク技術関連で繋がったユーザー達の呟きが流れている。
「今日は早く帰りたい」や「昨日のアニメは面白かった」など様々な事が書かれていた。
それらをスクロールしつつ簡単に眺めていると、「playmakerがGO鬼塚にデュエルで勝利した」という呟きが目に入った。
そこには、そのデュエルについての記事がURLで添付され、開くとまとめサイトが表示された。
記事を軽く読むと、「昨日playmakerとGO鬼塚のデュエルが行われ、接戦の末playmakerが勝利した」という内容だった。

(playmakerまたまた登場だね)
「(うん…GO鬼塚さん負けたんだ。あの人本当に強いのに)」
(LINKVRAINSでトップ争いする程の実力だからね。playmakerはかなりの実力者ってことか)
「(みたいだね。だと、ブルーエンジェルとも同じくらい強いのかな?)」

詳しい内容が少し気になり、その記事を詳しく読んでいると

「水守さんおはよー」

声のした方を向くと、そこには島がいた。
最近はplaymaker以外の話題でも話すようになり、以前よりも話す回数が多くなった。

「島君おはよう」
「朝からニュースの記事読むなんて真面目…ってそれ昨日のplaymakerの記事じゃん」
「うん。島くんは昨日のデュエル見ていたの?」
「あったりまえよ!お互いにギリギリでの攻防戦で手に汗握りながらみてたぜ」
「そうなんだ」

そこから、島が昨日のデュエルについて話し始めた。
playmakerのリンク召喚に対抗してGO鬼塚もリンク召喚で応戦したことや、お互いのエースモンスターでの一騎打ちなど少し詳しい部分も交えつつ話をした。

「あとは…って」

話していた島が綾瀬の後ろの方を見た。

「どうしたの?」
「いや、さっき藤木のやつがこっち見てたからよ。」
「えっ」

島の視線と同じ方向を向くと、自分の席に突っ伏して寝ている遊作の姿が見えた。

「アイツいつもはあぁやって寝てるから珍しいなぁって。もう寝ちまってるけどな」
「っそうなんだ」

すると、始業のチャイムが鳴った。
それと同時にクラスメイト達が自分の席に移動していく。
「それじゃあ」と言うと、島も自分の席に戻っていった。

(…綾瀬?大丈夫だって!島君のこと見てたのかもしれないし)
「(そ、そうだよね。大丈夫大丈夫!)」

クラスの全員が自分の席に戻った頃、教員が入ってきた。

「(今日一日本当に大丈夫だろうか)」

綾瀬は小さくため息をついた。

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