「(…やっと、終わった)」

今日の授業が終わるチャイムが鳴るとともに、綾瀬は机に頭を置いた。
あの後、空き時間には技術本を読んだり休み時間には葵の所に遊びに行くなどして出来る限り気にしないように行動をしてみた。
結果からすれば昨日よりは視線は気にならなかった。
しかし、気にしないように意識することを意識しすぎてしまい逆に疲れてしまった。

(一応聞くけど、大丈夫?)
「(意外とシンドかった...気にしないようにするって、結構難しいかも)」
(「気にしないように意識する」って簡単そうに見えてかなり難しいんだね)
「(そうだね)」

目だけを動かし、教室の周りを見る。
殆どの生徒が部活に行くための準備をしており、他は友人と話していたり早々に教室を出ていく生徒もいた。
何も考えずにその光景をを眺めていると、どこからか「明日休みだしどこか行こうかな?」といった会話が聞こえた。

「そっか、もう金曜日なんだ(色々と落ち着いてなかったから気が付かなかった)」

不安なことをずっと気にしていると、ちょっとしたことも気が付かなくなってしまうのだと綾瀬は思った。
そして、ここ数日の自分がある意味損をしているような気持ちになった。

「(…今日は葵部活だし、帰ろっか)」
(そうだね。とりあえず、土日は思いっきり好きなことやろ!)

綾瀬は頭を上げて帰宅の準備を始めた。
気がつけば殆どの生徒が教室からいなくなっており、残っているのはほんの数人だけだった。

「(準備終わりっと)よし、帰ろ」

鞄を持つと、綾瀬は教室を出た。
殆どの生徒が部活に行っているためか、廊下を歩いているのか綾瀬以外誰もいなかった。
そのまま昇降口に向かい、校舎を出た。

(あー今週も無事に終わったね)
「(無事なのかはなんともだけど、とりあえずはなんとかなったのかな?)」
(気にしないようにしようとしただけ全然いいって。ずっと悩んでいるよりかはましだよ)
「(それもそうだね。ありがとう、斗亜)」
(いえいえ!とりあえず、この後どうする?)
「(ん~。とりあえずあの本を読み進めたいな)」
(あの本って、技術本の事?)
「(そうそう。残りあと少しだから読んじゃいたいんだよね)」

そう言って、綾瀬は鞄のチャックを開けて本を取り出そうとした。
しかし、肝心の本が見つからなかった。

「あれ?無い…」
(でも今日読んでいたよね?)
「(うん。たしか昼休みの時に読んでて、それから机の引き出しに…あ、)」
(取り出すの忘れた、と)
「(還る時に机の上に…とりあえず教室に戻ろ)」

綾瀬は本を取りに行くために校舎に戻った。
誰もいない廊下を歩き教室に戻ると、綾瀬の机の前に誰かが立っていた。

「…あっ」
「…」

綾瀬の声に気が付き、人物が振り返る。
そこにいたのは、遊作だった。


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