れんらく
 初の顔合わせが済んだ後、本部の書類場所や部屋の案内、また秘書としての仕事を説明されて一日が終わった。

 今日もまた本部で引き継ぎの説明などをナマリ様から教えられるため、仕事用の服に着替えて家を出る。
 親友のスズちゃんに朝食を一緒に取ろうと誘われたため、一枚上着を羽織っていつものカフェで彼女を待った。

「ごめんごめん、誘ったくせにちょっと遅くなった」
「ううん、大丈夫だよ。私も今来たところ……」

 数分ほどして、ようやくスズちゃんがやって来た。先に頼んでおいた料理が、いいタイミングでやってくる。
 モーニングセットで良かった?と聞くと、走って来たのか息を切らしながら親指を立てて答えた。

「で、最初のお仕事はどーだったの? 風影様も居たんでしょ?」

 スズちゃんが座ってポテトサラダのサンドイッチに大きくかぶりつく。せっかく大人っぽい雰囲気の彼女も、ご飯を食べる時は子供っぽくて可愛らしい。私は「まあまあかなぁ」と答えると、ホットコーヒーに口をつけた。

「まあまあってアンタね……相手の候補者はどんな感じの子だったのよ?」
「んー……美人だった」

 私がプラチナさんの様子や、彼女に笑われたことをスズちゃんに伝えると、スズちゃんは急に憤慨し始めた。

「何それー!? ぜぇったいその子、名前子のこと馬鹿にしてるって!」
「馬鹿にされてるのかはわかんないけど、やっぱり同じ秘書候補だし……きっと、あんまり良くは思われてないよね」

 昨日の彼女の顔を思い出す。敵対心はむき出しではなかったけど、うーん。
 何だろ、相手にもされてないような。

「まあ、他人のことより……まだこれからだからね、自分に出来ることを少しずつ頑張るよ」
「アンタらしいわね」

 スズちゃんは眉を下げてやれやれと笑った。競争意識の低い私の事を理解してくれるのは、彼女くらいなものだろう。
 私も一口に分けたホットケーキをあーんと頬張った。そんな私を見ながら、スズちゃんが思い出したように言う。

「そういえば名前子、私が来る前に、カフェで何かしてなかった?」

 私は走ってきたのに目ざといなと思いながらも、テーブルの隅に置いていた折り鶴を彼女に見せた。
 鶴を手の平に乗せると、ふうとチャクラを込めて息を吐く。すると折り鶴は命を与えられたように両の羽根をぱたぱたと動かし始めた。

 その様子を見ていたスズちゃんは、目を輝かせて私に質問の嵐を投げかける。

「ナニコレナニコレー!? 名前子ってば、どうやってんのこれ!?」
「スズちゃん、驚きすぎだよ」

 私は苦笑いしながら、動いていた鶴を両手で包むと鶴は静かに動きを止める。

「お母さんにね、もっと早く手紙を送りたくて……まだ試作段階なんだけど、この方法を試しているの」

 私の家庭内事情も知っていたスズちゃんは、母の話を始めると途端に心配の顔をした。

「お母さん、木の葉の里で療養中だったっけ?」
「うん、そう」

 私の母は気管支が弱く、粉塵の舞う砂の里はあまり体に良くない。そのため、母は森の多い空気の綺麗な木の葉の里に移住し暮らしている。
 最近は体調も良さそうで、連絡用の鳥を使って手紙のやり取りをしているのだけど……。

「人の足で木の葉まで三日かかるでしょ。緊急用のハヤブサでも木の葉までぶっちぎりで飛ぶには五時間はかかるけど、民間用には使えないし。でもこれなら……」

 折り鶴なら、動物みたいに寄り道したり、人間みたいに疲れる必要がないからチャクラが尽きるまでなら二時間で木の葉に届く。

「やり取りが楽になるわね」
「うん」
「お母さんは元気なの?」

 スズちゃんが恐る恐る聞いてきてくれる。勇気を出してでも聞いてくれる彼女の、そういうところが私は好き。
 私はニッコリと笑うと頷いて答えた。

「うん、大丈夫。やっぱりあっちの環境がいいのかな。仕送りもしなきゃだし、風影様に秘書に選ばれるように頑張らないと」

 その意気よ!とスズちゃんが鼓舞する。私は勢いづけるために残り少なくなったコーヒーを一気に飲み干して、折り鶴をポケットに押し込んだ。

……To be continued