指先に残ったスナック菓子の粉まで頂くのが私は好きだ。
何か勿体無い気がするからなんだけど、最後のお楽しみを頂くようで楽しい。
美味しくなった指先を見つめて機嫌を良くした私は、残りの甘辛いスナック菓子をまた口に頬張る。んま。
リスのような頬袋ができた私の元に、我愛羅が「また食べているのか」と呆れながらやって来た。
「あ、おかえふぃ、ふぁあらー」
「……口の中の物を食べてから話せ」
最近は風影候補にも選出されるのではないか、と噂をされている彼。難易度の高い任務から帰宅したのだろう、本部の給湯室で間食をしている三流忍者とは偉い違いだ。もぐもぐ。
「あまり女性に言いたくはないが……食べてばかりいると、太るぞ」
「うぐ」
私は昨日確認した体重計の数値を思い出し、ギクリと硬直した。
これでも、任務は割りと積極的に頂けるようお願いしてるんだよ。その度に体を動かすようにしてるんだよ。
でもやっぱね。美味しいものには勝てないよね。
私はごくんと食べていたお菓子を飲み干した後。唇を尖らせ、ジト目で彼を見つめる。
「……い、いーじゃんよー。だいたい、お菓子が美味しいのが悪い」
「余計な量まで食べてしまう名前子に問題があるんじゃないのか?」
むう。いつもなら、スルーするくせに。
私は頬を膨らませてむうっと彼をまた睨みつける。私の家族や恋人でもないくせに、最近の彼は一言二言、多い気がする。
私はイライラしながら、スナック菓子を袋からつまみ上げて口に流し込んだ。
「そんな事ないもん。だいたい、彼氏でもないのに、私の風貌がどうなろうと我愛羅には関係ないでしょ!」
私があーんと、指先に残ったスナック菓子の粉までも舐め取ろうと口元に持っていこうとした、その時。
強い力で手首を掴まれ、我愛羅にそのまま引き寄せられて――
「……あ。」
ぺろり。
と、彼に指先を食べられた。
というか、舐められた。
「っ……ぎゃあーー!?」
私は慌てて手を引こうとするも、そういえば爪が伸びていたことに気づいて一瞬、躊躇する。今急いで手を引けば、爪が我愛羅の唇に当たって切ってしまうかもしれない。
猫や犬が餌を求めて舐めるように、彼の舌が中指に残る粉を絡めとる。温度と感触に戸惑って、私はほんの数秒のこの時間、固まったように動けなかった。
瞳と瞳がぶつかった瞬間、心臓が跳ね上がる。と同時に我愛羅がぱ、と手を離した。
「な、な、何すんのっ!」
「……美味しそうなお前が悪い」
彼は明らかに不機嫌な態度で背を向け歩き出すと、自分の指についたスナック菓子の粉も舐め取っていた。
「意味わかんない」
我愛羅が居なくなった後。彼が触れた指先を自分の口元へと持って行ってみる。我愛羅が何で怒ったのか、何であんな事をしたのかわからない私は、やっぱり三流忍者なのかもしれない。
私は「間接キス」という言葉を思い出して慌てて手を振り回しながら、彼の真意を図りかねていた。
end
あとがき
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