献盃


22飽くなき愛※




結婚の申し込みを受け入れて貰い、加えて懸念していた転勤の話も彼女から改めて「ついて行く」と言霊を取って柄にもなく喜びが抑えられなかったかもしれない。こんなに嬉しさが込み上げてきたのはいつ振りだろうか。思わず抱き締める力と口付けの加減が出来ずに、苦しがったベルに謝る。

今度こそ、愛する人間を守らなければ。

そう思うと、今すぐにも抱きたくなって客室付きの風呂に行こうと誘うと、恋人の枠を超えたというのに彼女は頑なに灯りに照らされるのを嫌う。そんな処も可愛いらしいと普段なら思っていたが、生憎今夜は余裕がない。先に入っていてくれと言われたので脱衣場でさっさと脱いでかけ流しを堪能していると、ご丁寧にタオルでぐるぐる巻きできたベルが湯船に入る。問答無用に此方に引き寄せた後、無駄な努力をまた無きものにすべく、ごてごてのタオルを取っ払った。抵抗しないのは多分、自分の前では隠すのはもはや無意味だと降参した為であろう。

「……あ、あんまり見ないで……」

「眼福じゃが?」

一度引いてから見たくてベルを湯船の中から立ち上がらせ浴槽の淵に軽く寄りかからせると、その肢体の大部分が白い灯りに照らされてようやく露わになった。当の本人は胸を隠すのは諦めたのか、下の毛だけは申し訳程度にタオルで隠していたのが不満だがまぁいい。水をはじく綺麗な肌、女らしい体の曲線美、火照らされている彼女の恥ずかしげな顔。
思わずごくりと生唾を飲み込んでしまうほど、言葉だけで表すのは語彙力が足りない。ずっと見ていたくもあるが、それと同時に触りたくもなる。寒かろうと、かけ流しを少し掬って細い首から下へゆるりと手を辿らせる。

「綺麗な体しとる」

「んっ……」

「白い」

そして美しい。
いつも暗闇の部屋の中で抱いている女の体がここまで美しいものとは思わなかった。
形の良いふくよかな胸に申し訳なさそうに着いたつんとした乳首が扇情的で軽く摘んでしまうと、彼女の喘ぎが漏れる。揉みし抱けば、認めたくはないがあの旧友が言う通りなかなか揉み応えがある程の大きさで指が沈む。手は柔らかな丘に、視線はその下の鳩尾から腰や臀部へと送る。隠された秘部の上のタオルが邪魔だが。

「あぁっ……ん、恥ずかしい、死にそうです…っは…サカズキ、さん」

「まだ我慢せえよ」

ゆっくり堪能して食べてやりたいが、風呂に浸かっている故、お互い逆上せない為にもあまり長居はしない方が良さそうだ。
自分も湯船から立ってベルに口付けを送ると、少し力が入っていた彼女の肩が下がる。ぷくりとした乳首を少し転がして可愛がるだけで、喘ぎを我慢できずにびくっと震える様子がまたいじめてやりたい気持ちになる。普段はあまり口にはしないが、今日ぐらい耳元で卑猥な言葉を送るとしよう。

「えろい体しとるのう」

「っ!?ふ……ぃやっ」

言葉に反応したか?と思ったが違ったようで、片耳を抑えて湯船に沈む。真っ赤な顔をして目を瞑っていて、肩を震わせていた。

「耳!だめですっ……耳っ、だめ……」

「ほう?」

そういう顔が加虐心を煽ってると分からないのか。無意識とは恐ろしい、誰に教わったのか。
ふと、湯船に浸かったおかげで彼女の眼前にみっともなく固く隆起した自身に注目が集まる。目を逸らすかと思ったが、ベルは次第にとろんとした視線で見つめてくる。まずい、これは。
案の定、彼女が徐ろに自身に伸ばそうとした手を咄嗟に払うと、残念そうにしていた。

「やめえ」

「あ……」

最近、ベルから有り難い事に積極的に吸ってくれる。自分もダイレクトに彼女の舌を感じる事ができるし、奉仕してくれる彼女の健気さも可愛い。
だがこれの難点は、気づいた時には彼女はその行為だけで既に濡れていて、受け入れ万全の体勢になっていること。最初は甘んじて抱いていたが、何だか面白くない。極力弄られる時間を少なくしているのか?とすら疑ってしまう。自分は彼女が感じて狂ってる方を見てみたい。気持ち良くて自我を保てない彼女を眺める方がよっぽど興奮する。  
奉仕は自分がどうしても勃たなくなったらしてもらう事にしよう。まぁ、そんな日が来ない事を祈るしかないが。

もう一度ベルを立たせて浴槽の淵に座らせる。少し大胆だが、彼女の片足を折り曲げて上げさせ淵に留めさせると、予想通り露わになる秘部を隠そうと白子のような手が伸びてくる。

「っ…だめ」

「だめばっかりじゃのう、お前は…」

少々不満を強めに主張するとベルは弱い。眉を下がらせ、困ったように隠していた手を一瞬だけ退かしたが、やはりまた隠す。いつもより光に照らされて羞恥心が煽られるのは分かってはいるが、どうしても譲りたくはなかった。

「綺麗言うたじゃろう?なしてさせてくれん」

「だって、おかしくなるの。そんなとこ」

むしろそれを狙ってしているが。
時間が惜しい。逆上せる前に一度イかせておくか。
少々強引だが邪魔な彼女の手を太腿の上で抑え、茂みを掻き分けて秘部を拡げさせる。しっかりと視えた秘芽を捉えて指で弄んでやると、風呂場に嬌声が反響した。

「今日ぐらい、おかしくなりゃええじゃろ」

「ひぁっ、まっ……て!」

さっさと善がってその清純そうで穢れを知らないとでも言うような顔を崩せと言いたい。本当はこんなにも淫らで男を欲情させる女の癖に。そのギャップにまた興奮する自分もまた、同類ではあろうが。

「ふっ…あ、ん……あぁっ……!」

指の愛撫だけでなく、舌をも使って秘部を撫でてるやると一層艶の籠もる声。湯なのか彼女の愛液なのか、もう既に分からんがよく濡れている。風呂であっても、若干雌の匂いがするのがまた燻らせるのかもしれない。臭い程ではないが、癖になる程度の匂いがまたいい。彼女もまた、他の男にこんな処を吸わせた事があるのか。だめだ、バツイチ身分の自分が偉そうに求める事ができる訳ないと脳内からすぐ振り払う。
快感に耐えられないのか、彼女の手が自分の頭を押さえる。

「は……ふぁっ……あっ、んぁっ!」

「少し指挿れるぞ」

解せてきたであろう密壺にまず人差し指を挿れると容易にどっぷりと飲み込んだ後、きゅっと締めるような圧迫感。抜き差しを十分慣らさなくても既に滑りが良いなんて、本当にすけべな女だ。

「う、あぁ……あ!……まっ……あ、」

「お前はここが好きじゃったな」

「あぁ!……やっ、それ…だめぇっ」

浅くコリッとした場所を狙うと大きく湯船の湯が揺らぐ。彼女の片足が思わず動いたせいだ。一度や二度だけでなく、そこを執拗に責めていくとあれだ。的確に狙われる快感で我慢できないのか、自分の頭を抑えていた手が更に強くなる。当然、鬱陶しくなって邪魔な手は自分の手と繋いでやった。

「はぁっ、やっ……まって!……まっ……て!」

ベルは本当に焦るとまってと連呼する。もう少し強めに貪ってやるかと悠長な事を考えていると、今夜の彼女も自分と同じく辛抱堪らんらしい。案外呆気なく絶頂がやってきたらしくて、大きく体全体が揺れる。

「いやっ、きもちっ!きもちぃ……!まっ、て、おかしくなっ」

「早えが、イけ」

「い、あ"ぁぁっ!!」

快感でどうしようもなく歪んだ顔を見れるこの瞬間が一番唆る。両脚を震わせた彼女はそのまま力が抜けて湯船に沈んできたので受け止めると、荒い呼吸を整えつつ抱擁を強請ってきた。本当ならもう少しゆっくりしていたいだろうが、生憎自分も潜りたいし何より逆上せさせてしまったらお預け食らってしまう。頬に軽い口付けを落としてベルを湯船の外へ促す。

「逆上せたらいかん。上がるぞ」

「はぁい………」

露天風呂から出て、軽くバスタオルで自分とベルの体を拭き上げる。がくがくと少し足を震わせる彼女の体を支え、部屋の方に向かうと暖房が効いていた。
広いベットに早速彼女を押し倒すと、力なく胸を押されてしまい拒まれる。だがそれすら無視して足を拡げさせ、はち切れんばかり膨れた自身をベルの秘部に宛てがうと、許しを乞うように制止する声。涙目だったのは見なかった事にする。

「さかずきさん……まって、わたし、今イったばっかだから」

「ほう、そうなんか」

だからなんだ。おとなしく火照りが冷めるまで待てというのか?生憎そこまで優しくない。他人事のように聞いて、膣に圧をかける。

「あと、ゴ…、ぅぁあっ!」

避妊具を付けろと指摘される前に自身をベルのほやほやとした中に沈めた。また軽く達したようで、くたりと呼吸を荒くして力尽きていた。

「はっ……まって……そんな」

「痛うないか」

それだけは気にしてやる。
まだまだ半分しか挿入っていない。呆けたベルに深い口付けをして、ぐっと彼女の奥まで進むように腰を突き上げるとベルの両脚が自分の腰に絡みつく。恐らく全部、入ったのだろう。

「おくっ!…あ、ぅあ"っ!き、もちっ………」

「っ……」

とはいえ彼女の言う通り、ここまで気持ち良いとは思わなんだ。避妊具越しではない彼女の粘膜と擦り合せているだけなのに、何というか密着感というか征服欲というか。眠っていたはずの自分の苛烈さが呼び起こされたの如く、少々激しい感情を揺すぶられる感覚がきた為。

「ベル」

「は……い?」

「すまん」

一言謝った。今夜は理性を抑えられそうにない。
しかと彼女の腰を掴み、本能が赴くままに一心不乱に腰を動かした。勿論、今までそんな抱き方はした事はなかったので彼女も驚いただろう。性急に求めるほどお盛んとも思われたくなかったゆえに。

「いやぁっ、んん……はげしっ!……ん」

「………は」

此方の謝罪の意味が分かっただろうか。万一痛がったら止めるが、そうでないなら構わず続けるつもりだ。打ちつける度ベルの嬌声が大きくなり、先程解しておいたそこの濡れが淫らな不協和音となって耳に響く。

「だめっ……あっ、あん……ぁ!」

揺れるのは腰だけではなく、ふくよかな胸さえ動く度に上下に揺れて眼福な眺めだった。
嫌味のない可愛らしい顔、灯りに照らされて分かった白く美しい体、自身を咥え込むの秘部、そして自分が動くたびに漏れる喘ぎ。

「……き、もち…いッ!あぁっ、」

これから何度一緒に寝て一緒に食べ同じ時を過ごすのだろう。偶然の出逢いがまるで必然だったかのように、本屋で再会できた時は素直に運命を感じた。ベルに会えば会う程、ここに居場所が出来たかのようにしっくりとくるものは一体何なのか。自分も彼女と同じく若い頃から理不尽な貧しさを経験しているからか、理由は違えど温かい家族に憧れを持てなかった人間同士だったからか。年齢差がこれほどあるのに、彼女と出会うべくして出会った気がしてならないのは愛情ゆえなのか。

何にせよ、結婚するのなら必ず幸せにしてやらねばならない。彼女は多くは望まないが、自分が叶えてやれるものはできるだけ叶えてさせてやりたい。

そしてもう二度と、同じ轍を踏まぬように。

「そろそろ……」

「おねがっ、」

暗に外に出せと請われた気がしたが、見なかった事にした。

「あ、あっ……あ"あぁぁ!」

「……ぐッ」

びくびくと痙攣した中に欲を吐き出した。せめてもの抵抗か腰を引こうとするベルの行動を阻み、その最奥に暫く居座った。彼女の荒い息遣いを感じながら、疲れた身体を重ねると未だ激しい鼓動が交差する。お互い余韻に浸り、せっかく流したはずの汗もまた吹き出していて暑い。
そのうち、少し困ったようにベルから言われる。

「はぁっ……はぁっ……なか、だめって」

「幻滅するか?」

ーーー大人気ない事をしたのはわかってる。
それでも、どうしても一番深い処で愛しいベルと交わってみたかった。たかだか皮一枚ぐらいの厚さがあるかないかの話だが、たったそれだけの事で自分は離婚を余儀なくされてしまったものだから。

「……どうしても、独り占めしとうてな」

思い出すのも嫌な話だが、前の女にはずっと拒まれていた事だった。子どもが万が一出来たらキャリアはどうするのだ、仕事はどうするのだと一も二もなく言われた。お互い三十路も超えて、結婚する前にその女は子どもは一人は欲しいと言っていたはずなのに、矛盾した答えが理解出来ず喧嘩腰になってしまう。家庭に入っても不自由はさせない、育児もすると言っても聞く耳を持たず、じゃあ何で自分と結婚した?と聞けばわからないと言われ堪忍袋の緒が切れた。そして束縛してでも愛情を繋げようとした結果。

自分との行為は拒むのに、間男とはできるらしい。

ーーーもう、あんな思いはしたくない。

情けない、男らしくもない。理由はどうあれ、女一人も幸せに出来なかった自分の甲斐性のなさに失望していた。男として認められなかったようなそんな気がしたのだ。
すると、自分の胸中を知ってか知らずか、ベルが自分の頬と頭を撫で優しい声をかけてくれる。

「心配しなくてもサカズキさんのものだよ?これからもずっと」

たったこんな言葉ひとつで癒されてしまう。相手の意見も聞かずに致してしまったと言うのに、責める言葉をそれ以上言わず飲み込んでくれたのが嬉しかった。

あぁ、愛い。この女を必ず幸せにしなければ。
彼女の中から一度出るのすら惜しい。膨れ上がる単純な欲望は飽くなき愛を求めてもう一度を乞う。

「足りん」

「いいよ?……サカズキさんになら」

悪魔の囁きかもしれん。そういえば先程、彼女も随分と気持ち良いと言っていたので多分その虜になってしまったのかもしれない。決して自分が言える立場ではないが、彼女も正常な判断とは言えない。

「……」
 
やっぱり、やめておこう。
今更意味がなかろうが、ベットの淵に置いておいた避妊具を取る。どちらにせよ、ベルを徹底的に守るのは変わらない事だが先に彼女の意向も聞かずに致した事は反省しよう。本当に祝福されるその日が来たらば、もう一度彼女に確認しようと思う。


飽くなき愛。
(愛しているからこそ、足りないもの)

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