05
先日のこと。私の外出中にラバキンさんが来てすぐにまた帰ったらしく、テーブルの上に書き置きと水菓子が乗っていた。まだ熟れきっていないのか瑞々しく赤い色が宝石のように美しい。ファラモンで採れたものだろうか。
問題は書き置きの方だった。数日が過ぎ、また我が家にやってきたラバキンさんに件の紙切れを突きつけてみる。
「字がへたくそで読めません」
「容赦ねぇな、おい!」
そこまでひどいもんじゃねぇだろ、なんて唇を尖らせつつ紙を引ったくったラバキンさんは、自分の字をじっと見つめたあと首を傾げた。
「読めねぇな」
「……」
「い、いやまあその何だ、どうせ大したことじゃないからいいだろ? 急ぎだからすぐ帰る、サルサビル土産を置いとく、それだけだ」
「サルサビル王国ですか。遠出してきたんですね」
次に彼が来るまで置いておこうかとも思ったのだけれど、量も一人分のようだったし食べてしまってよかった。きっとあまり日保ちしなかっただろうから。
「……王国、か」
ラバキンさんはなぜかまだ首を傾げている。書き置きの内容ではなく、私の言葉に不可解なところがあったようだ。……何だろう?
「どうかしました?」
「何でもない。気にすんな!」
「はあ」
はぐらかされるのは気分が良くない。普段が明け透けで分かりやすい彼だからこそ、言わんとしていることが理解できないと少し不安になった。
「しっかし、俺って字が汚かったんだなぁ。読み書きする機会がなくて知らなかったぜ」
それで少しも落ち込まずにいられる辺りがこの人のすごいところだなとも思う。自分でも読めない書き置きを眺めて彼はむしろ満足そうだった。
「こんなメモならいいですけど、大事な用だったら困ります」
「大事な用なら直接言うから平気だって」
「直接言えないから書き置きするんじゃないですな」
「あー……確かに」
ぽりぽりと誤魔化すように頭を掻いてそっぽを向く。きれいな字を書く努力をする、という気はないらしい。
私にメッセージを残そうとしてくれる。それが嬉しいのは確かだ。だからこそ、きちんと伝えてほしいのにな。