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ゆうべ遅かったラバキンさんは、今頃ようやく眠たげな顔で居間に現れた。もう昼前だ。
「おはようリオ」
「はい。こんにちは」
「……嫌味かよ!」
「だって早くないですよ」
昼食にはまだ早いけど一食抜くのも体によくない。ラバキンさんには私が朝に食べた残りのパンを一切れとコーヒーを出した。お昼ごはんを心持ち多めに作ることにしよう。
クライス団に依頼される仕事は遠出しなければならないものも多く、旅の途中は生活が不規則になるのは仕方ない。とはいえラバキンさんはその生活が癖になってしまっているらしく、家にいる間も夜更かしや寝坊がかなり多かった。
もう歳なんだから、しっかりしてほしいと思います。
「リオは本当にきっちりしてんなあ。今朝は何時に起きたんだ?」
「夜8時に寝て、朝4時に起きますよ」
「早っ! いっつも早起きだとは思ってたが、毎日そうなのか」
「はい。朝早く起きて一日の仕度を整えれば、夜に無駄なことをせずに済みますから」
それも協会式かとうんざりしているラバキンさんに、いいえと首を振って答える。彼は誤解しているけれど実際のところ協会には明確なルールなどないのだ。ひとつの道とは「未来を受け入れよ」という意味なのだから。
でもそこに突っ込むと口論になりかねないし、今は無関係なので置いておこう。
早寝早起きは一人暮らしを始めてからの私自身の習慣だ。両親がいなくなってすぐは心が不安定で、寝る時間も起きる時間もバラバラだった。昼を過ぎてからやっと起き出し、食事も面倒でずっとごろごろしていたり、そうして夜眠れなくなったり。
一人の家で眠れないのは辛かった。静けさの中でじっとしていると嫌なことばかり考えてしまう。早く眠って夜をやり過ごすために、早く起きるようになった。朝は忙しいから考え事になんて浸らずに済む。
「健康にもいいし、改める必要性を感じないです」
「ああもう、んなこたぁ年寄りになってから考えりゃいいんだ! 若い頃からそんなでどうするよ! 若気の至りで遊ぶなら今のうちだぞ!?」
そう言われても遊びたいと思わないんだからどうしようもなかった。無理して夜更けまで起きていたって本を読むくらいしかすることがない。それは翌日の昼にもできる。そして夜が長くなるほど、明日の朝が遅れてやってくるのだ。そんな無駄なことってあるだろうか。
まあ、昔より寂れたとはいえグレイリッジにも歓楽街の名残はある。私は興味がないけど遊ぼうと思えば夜でも遊べるだろう。
「ラバキンさん、私が夜遊びした方がいいと思うんですか?」
「……いや、」
「ラバキンさんが若かった頃みたいに?」
「駄目だ。絶対ダメだああ! お前は女の子なんだぞ!」
一体あなたは何をして遊んでたんですかと聞きたいくらいの剣幕だけれど怖いから黙っておこう。鉱山で働いてたんだもの、いろんな意味で荒っぽかったんだろうと思う。あのローガンさんでさえ若い頃はかなり無茶苦茶やってたとか聞くくらいだから。
自分の昔を顧みて私の生活を見る目も変わったのか、ラバキンさんは真顔になって頷いた。
「分かった。リオはそのままでいてくれ」
「……ええまあ、そもそも変えるつもりなかったんですけど」
でも、なんとなく腑に落ちないなあ。