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日帰りの多かった以前に比べると、依頼を受けていない数日間グレイリッジに留まることが多くなってきたラバキンさんがうちで眠る日も増えていた。だから、そろそろ必要かなあとは思っていたんだ。
帰宅したラバキンさんに、おかえりなさいの言葉とともにそれを差し出した。
「……え、これ俺のか?」
「はい。ちゃんとした寝間着がなかったので、気になってて」
これまでは父さんのパジャマを貸していたけれど、はっきり言って小柄だった父さんとラバキンさんとではサイズがまったく合っていなかった。帰ってくるのが遅くなると彼は着の身着のままで寝てしまうので、専用のパジャマがずっと欲しかったんだ。
一緒に買いに行こうかとも思ったんだけど、自分の買い物もあったからついでに済ませてしまった。これは洗濯用の予備にすればいい。普段着も買っておきたいからラバキンさんにはそのとき付き合ってもらうとして、と彼が黙り込んでいるのに気がつき私も硬直する。
新品のパジャマを手にしたまま彼は微かに震えていた。
「え、えっと、袖を通す前なら交換も受け付けてもらえるそうですよ?」
父さんのと比べて計ったからサイズは大体合ってると思う。ラバキンさんの趣味が分からないからそれは一緒に買いに行くとき選んでもらうことにして、今回は洗い替えとして無難でありふれた安物にしてしまった。……そういうことに気を悪くする人ではないし。
私の困惑をよそにラバキンさんはそのパジャマを抱きしめると、泣き出した。
「あ、あ、ありがとよおおお!」
「は、はい。あの、それただの予備ですけど」
「こんな風にプレゼントもらったのは初めてだあああああ!!」
「それはあの、はい、よかったです」
ぐしゃぐしゃに泣き腫らした目を擦り、パジャマが汚れる! と慌ててそれを自室に片づけに向かった彼を見送り、私は少し後悔していた。
そんなに特別に喜ばれるなんて思ってなかった。ただ日用品を補充するように渡してしまった。……一緒に買いに行って、目の前で選んでもらえばよかったかなぁ。でもお店で号泣されたらちょっと恥ずかしいから、これでよかったのかもしれない。