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 クライス団の団長はどんな人ですかと尋ねたら、ギリアム様は少し考え込んだあと「昔のラバキンに似ている」と言った。
「えっと、よく泣くんですか?」
「そうなる前の話だ。ティア殿は口癖のように『やってみなければ分からない』と仰るが、昔のラバキンもその様なところがあった」
 先行きの分からない不安に躊躇し、竦んだ足を踏み出すための勢いを持っていた。今でもそういう傾向はあるけれど、若い頃のラバキンさんはもっと感情が激しく荒々しかったそうだ。
 気に入らないことがあれば理詰めで納得せず真っ直ぐにぶつかっていく、戦いの中で自分の意志を示していく……。クライス団の団長に、よく似ていたらしい。
「では、今のラバキンさんは違うんですか?」
「違うとは言わない。異世界での体験は彼を揺るがせはしたが、人の根本はそうそう変わらぬものだろう。今の彼は、突き進む強さを持ちながらも顧みることを知ったように思う。リオもいるからな」
「私ですか?」
「君と喧嘩別れをするのが嫌だから“気に入らない”で済ませず協会のことを頭で理解しようとしている。昔の彼には考えられなかった」
 私に会って変わったところもあるのか。それはとても嬉しい気持ちだった。ラバキンさんの故郷を塗り替えてしまった協会を理解するなんてとても頭の痛いことだろうに、それでも彼はやってみようとしてくれている。……私のために。
「幸せそうだね、リオ」
「はい」
「うむ。君たちが一緒にいることはお互いに良い影響を及ぼしているようだ」
 両親が亡くなったあと、ローガンさんたちが私の生活を支えてくれたように、ギリアム様は私の心を守ってくれた。自暴自棄にではなく自分自身の考えで協会に身を寄せる選択をしたのはギリアム様のおかげだ。彼ら二人は恩人だった。そして私の知らないラバキンさんの昔を知る人だ。
 ひとつの道の理念のもとにあってなお揺るぎない信念を持つ彼がそばにいたからこそ、協会にいても私は私の思考を捨てずにいられた。彼の保証があると心強い。私がラバキンさんのそばにいてもいいんだと思える。
 誰かに言われて従ったんじゃない。運命に身を委ねることも、私自身の決断だった。だからラバキンさんへの想いにも胸を張れる。始めから決まっていたのだとしてもそれは私の意思に相違ないのだから。



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