26
私とギリアムさんが揃ってグレイリッジに戻るのは久しぶりだ。私は人任せにしてしまっている宿を見、あちらは旧協会の支部で溜まりに溜まった請願を片づけなければいけない。その仕事が一段落し、落ち合った私たちの話題にのぼるのはここにいない旧友のことだった。
行方不明になっていたラバキンと、今は亡きヤトの娘であるリオ。彼らの暮らす家はラバキンの生家であり、リオにとってもまた同じだ。奇妙な関係の彼らは今、家族のようであり決してそうではない不安定な均衡を保ちながら共に過ごしている。
「心が若い、とでも言うのだろうか」
神妙な顔で呟くギリアムさんに私も頷いた。それが良い意味なら問題なかったんだろうが、残念ながらラバキンの場合は「年相応に成長していない」という側面が強かった。私より二歳上だが、ラバキンは生来の性格以上に子供っぽいところがある。
異世界での苛烈な体験に耐えるために防衛本能が働いた結果だろう、とギリアムさんは言う。私もそのようなものだと考えていた。つらい日々を生き抜くためラバキンの時間は彼の中で縮められて流れ去ったのだ。
リオとは親子ほどに歳が離れていて、二人とも恐らくは互いの亡くした家族の代わりに手を取り合った、はずだった。しかしどうあっても彼らは他人だ。一緒に暮らし始めるうちに擬似的な家族関係は変わりつつある。
「ローガン殿は快く思われていない様子だが」
「引き離したいわけじゃない。二人が幸せならそれが一番だ。ただ、友人が世間から後ろ指をさされるのはつらいな」
「うむ……」
リオはまだまだ子供だ。ラバキンにも若者のまま止まっていた部分がある。だからこそ、アンバランスな二人の外見が周囲を不安にさせるんだ。大人が子供をたぶらかしているように、うつってしまうのが。
私たちはそうでないことを知っていても、他人は彼らを信用してくれないだろう。
「私はリオが女になるまでの辛抱だと思う」
「……ギリアムさん、際どいことを言うね」
「い、いや、妙な意味ではなく、リオはどこか少年染みた危うさがあるから心配になる、であれば彼女さえ成熟してしまえば釣り合った二人になるのではないかと思っただけで!」
今のところ彼らの関係は明確なものではないが、好意を寄せあっている二人が同じ家で暮らしていればいつそうなるとも限らない。ギリアムさんの言うように、そうなってしまえば、恐らくは二人とも落ち着いてくれるのだろう、が。
ラバキンの旧友として彼の恋路を応援したい、リオを見守ってきた者として彼女の幸せを祝福したい、同時に、まだ子供だ、早すぎるという想いもある。おそらくはエリンのことを考えてしまうため……娘と同い年のリオをまだ女として扱いたくない父心のせいだろう。
「なんだか我が子の恋愛に立ち会わされている気分だよ……」
「そう、近しすぎるあまり手出しができないところはある」
もどかしい現状に二人して溜め息を吐いた。ラバキンの友として、リオの保護者として、私たちは似た立場にある。それが揃いも揃って何の手立てもなく思い悩んでいた。
恋愛などというのは結局、各人の心構えでどうにかするほかない。他人が気を揉んでも無意味だ。それは分かっているのだが、二人を大切に想うからこそ考えずにいられなかった。