28
ラバキンさんはソファーにもたれかかり、クッションを抱えてぼんやり天井を見つめている。私が隣に腰かけると視線を下げてにこりと微笑み、意味もなく私の頭を撫でた。
そのクッションは私があげたもの。今履いてるブーツもそうだ。テーブルに置いてあるティーカップも部屋に戻ればベッドシーツに枕にパジャマ、下着だって私が買った。彼はどんなプレゼントも喜んでくれる。
でもこんなに節操なく買えるのはラバキンさんが家にお金を入れてくれてるから。彼の助けで得られた余裕を彼に返してるだけじゃ、プレゼントになってない気もする。
私はラバキンさんに与えてもらうほどには何も返せていない。
「ラバキンさん、何か欲しいものないですか?」
「お、おう、またかよ。俺はリオが幸せなら他に欲しいもんなんかねぇぜ」
「そういうの誤魔化しだと思うんですけど」
「きっついなぁ、おい。俺はそういうおふざけは言わねぇぞ!」
「……それはそうかもしれませんね」
たぶん私は、ラバキンさんを喜ばせたいわけじゃないんだろう。いやもちろん彼が喜んでくれたら嬉しいけれど要するに尽くすことそのものが趣味なのだ。単に、何かをあげるのが好きなんだ。
本当はこの贈り物攻勢を迷惑に思われているんじゃないかとも考える。馬鹿みたいに拗ねる私にラバキンさんはちっとも怒らず苦笑した。
「そうだなぁ。強いて言うなら……」
「言うなら?」
ぐっと身を乗り出した私にラバキンさんはなぜか顔を赤くして言い淀む。
「あー、変な意味はねぇんだけどな? もし、その、嫌じゃなかったら」
難しいお願いだったらどうやって達成しようか、何を言われるんだろうと身構えていた私の耳に飛び込んできたのは、ラバキンさんらしくなく掠れた小さな呟きだった。
「だっ、抱きしめてみても……いいか」
「えっ?」
「やっぱり何でもねぇ」
「べつにいいですよ」
「聞こえてんじゃねぇかよおおおおお!!」
いや、だって少し呆気にとられたんだもの。そんなの改めて言わなくてもいつでもできることなのに。どうぞと彼の肩にもたれかかると、クッションを放り出した手がおずおずと私の背中にまわされる。
「……リオは柔らかいなぁ。妙にふわふわしてっから、ある日いきなり消えちまいそうで、怖くなるぜ」
「そんなに脆くないです」
「だよな。こうしてたら分かるんだけどよ」
優しく触れていた腕にぎゅっと力が籠められる。ラバキンさんの肩口に顔を押しつけるかたちになって少し息苦しい。隣に座って向かい合う不自然な姿勢で、どうしても体が緊張してしまう。
背中を抱き寄せる力強い腕、首筋にかかる微かな息づかい、押しつけられた胸板から感じる鼓動。力を抜いて身を任せてしまうと、脱け出せないほどの安堵感に包まれた。
「プレゼントも嬉しいけどな。リオの方が大事なんだ。だからお前は自分を一番大切にしてくれよ」
私と過ごす日々が一番喜ばしい贈り物だと彼は言う。だったらお金を費やしてプレゼントを買い漁るよりも、私自身をあげた方が喜んでくれるんじゃないだろうか。……いや、変な意味ではなくて。