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ラバキンさんは言動が大袈裟だ。何かをプレゼントしたとかごはんを作ったとか、なんだったら帰宅した彼に「おかえりなさい」と言っただけで感激して泣いたこともあった。
それも媚びをうってるんじゃなく全力で本気の感謝の気持ちだと伝わるから、呆れるよりも照れてしまうのだ。どうしてあんなに素直でいられるんだろう。周りの大人はもっと恥ずかしがりだけど。
異世界での体験が辛かったから余計に、他人に優しくされると感動してしまうんだと思っていた。でも彼は一向に慣れる様子がなく未だ咽び泣くほど感激してくれる。たぶん元々そういう性格なんだろう。尽くし甲斐はあるけれど、そんな大したことしてないのにとかえって申し訳なくもある。
「なんだか私がお世話になるばかりでラバキンさんに何も返せてないですね」
「そりゃ俺の台詞だろうよ。実際、俺の面倒見てるのはリオじゃねぇか」
「それは私が好きでやってることなので……むしろ迷惑なんじゃないかと心配です」
「いや、それは絶対にない!」
きっぱり言い切られるとホッとする。嘘のない彼の言葉だから、迷惑じゃないと言うならそれは遠慮ではなく真実だった。
ラバキンさんが喜ぶと私が嬉しい。だからこれは私からの一方的なもの。そしてもっと喜んでほしいから、また何かしてあげたくなる。“彼の望み”を叶えているのとは違うんだ。
「お前は仕事してるとき以外うちにいるから、家のことは自分でやっちまうんだろうけどよ。リオは俺になんかしてほしいことないのか?」
確かに、帰宅のタイミングが定まらないラバキンさんに手伝ってもらうよりも自分で立てた計画通りに動く方が楽ではあった。必要なものを買いに行くのも私だから家庭の仕事で彼がしなければいけないことというのは特にない。それに、うちにいるときはただ寛いでいてほしいし。
「うーん……んー……ちょっと待ってくださいね、考えるので」
「いやまあ、そんな悩まなくてもいいんだけどよ」
何かあったら遠慮なく言えと笑うラバキンさんに戸惑いつつ考える。自分の望みについては今まであまり頭が回らなかった。
私がラバキンさんに喜んでもらいたいように、彼だって家族に何かしたいのだろうと思う。甘えられたり頼られたりすると嬉しいものだから。私がラバキンさんに求めるもの、してもらいたいこと。……何だろう?