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 リオが服を掴んでじっと見上げてくるので何かと思ったら裾がほつれていた。私がしましょうかと言う彼女に軽く手を振り、裁縫箱を持ってきてさっさと縫い直してしまう。
 これくらいならリオを煩わせなくても自分でやれるんだが、心外なことにリオは思い切り意外そうな顔で俺の手元を見つめていた。
「ラバキンさん、意外と器用なんですね」
「意外は余計だろ。ガキじゃあるまいし、これくらいできるぜ」
「ほつれてるのは自分で気づかないのに」
「それとこれとは別なの!」
 俺は粗忽だが手先は器用だからな、と言うとリオは「開き直るな」と言いたげな顔をしつつも黙っていた。妙な気を使わず遠慮なく突っ込んでくれた方がありがたいときもあるんだぞ。
 本当は、異世界に行ってから身についた性分だった。あっちじゃ私物なんてほとんど与えられなかったからな。数少ない持ち物はこまめに修復して極力長持ちするよう、なんでも大事に扱ったもんだ。
 今じゃあ家にいる時間の都合上リオに家事を任せてるが、大抵のことは自分でこなせるつもりだ。
「まあ、なんだ、独り身だしなあ」
「器用さの理由が侘しいですね」
「言うなよぉ……」
 ローガンなんて早くにしっかり者の恋人とくっついちまったから身の回りのことに関してはてんで不器用だ。その分エリンちゃんがフォローしてるからそれでちょうどいいんだろう。ギリアムだって身の回りのことやってくれるやつには事欠かなかったから家事なんかできやしねぇ。
 そう考えると必要に迫られて得た俺の器用さってのは確かに侘しい。
「……」
「ラバキンさん、悲しくなっちゃったんですか。今は私がいるんですから、どんどん甘えてくださいね」
「リオはほんっとにいい子だなああ」
 そうだ。今は俺を気にかけ甘やかしてくれる家族が、リオがいるんだ。だから平気なんだ。俺だって……独り身……だが、孤独じゃないんだ!



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