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鉱山で狩りをするならその足でシトロン城に帰るからクライス団の連中がグレイリッジの宿を利用することはほとんどなかった。が、近頃は城に戻らずトビラのあるファラモンやグレイリッジを拠点に長旅するやつらも増えている。鍛練し、金を稼ぎ、装備を整えるためだ。
城に帰る時間も惜しんでるのはつまり、いよいよサイナスに攻め込む日も近づいてきてる証拠だが、もちろんリオにはそんなこと言えやしねぇ。
遅い晩飯を食って、居間に差し向かいで寛ぐ、寝る前のまったりした時間。リオは宿に来た客の話をよくするようになっていた。
「クライス団の人って、きれいな人が多いんですね」
「そうなんだよなぁ。男も女も……」
俺としちゃあ気が気じゃない。冴えないグレイリッジの人間ばかりを見て育ったリオには刺激が強すぎるんじゃないだろうか。
俺もそこに所属する身だからもちろん仲良くなってもらえたら嬉しいが、必要以上に親しまれるとそれはそれで心配にもなる。なんせ個性的な面子が揃ってるんだ、リオが妙な影響を受けたら……というか。
「あ、あんまりよ、外見だけで惚れたりとか、そういうのは、よくねぇと思うんだよな」
「第一印象として会見はとても重要だと思いますが」
「いやいや、そこに囚われすぎんのは良くない。人間は中身だろ、中身! パッと見だけで決めつけるのはダメだ!」
「それはまあそうでしょうね」
実際グレイリッジの若い娘衆は協会から解放されて急に色づいてきている、とローガンやギリアムも言っていた。リオは最近よく自分の将来や結婚について考えているようだし、俺はもう心配で心配で!
「ラバキンさん、大丈夫ですか?」
「おっ! おう、ちょっと向こう側に行ってたぜ」
「向こう側……?」
昔は俺も他人の外見なんてそうそう気にしちゃいなかった。そりゃあ美女を見かければいい気分になったりはしたが、だから惚れたり美男子に嫉妬したりなんてこともなかった。こっちの世界に戻ってクライス団に入った頃もそうだった。確かに美形が多いなとは思ったが、それよりもあいつらの温かい人柄に惚れたんだ。
リオと暮らし始めてからのことだ。美的感覚の鈍い俺ですら感嘆するような若くて強くて優しくて正義感に溢れた反則級の色男たちはリオの琴線をどんなに震わせるのかと気になって仕方ない。
父親代わりとしての不安と、同じ男としての妬みが半々ってところだ。いや、リオには自由な恋愛をしてほしいなんて口では言いながら俺は結局、クライス団の男どもを目にして彼女の気持ちが具体的に進展してしまうのが怖いんだ。
「うぐぐぐぅ……っ!」
「ら、ラバキンさん、向こう側ですか? 帰ってきてください!」
外見って結構はっきりと人間性があらわれるもんだ。彼らが魅力的なのは単に顔が整ってるからってだけじゃない。その内面が、顔に相応しい男前だから。……だから! 余計に心配なんだよ、ちくしょう!