香り
「匂いを嗅いでもいい?」
「えっ、何の…」
「あなたの」
「!? い、いやそれはなぜ、というか駄目だ、このところ風呂にも入っていないので…そういう問題でもないが」
「べつに気にしないけどな」
「私が気にする。なぜいきなり…もしかして臭かったか?」
「そんなことはない。なんかね、テンプル騎士はリリウムの匂いがするらしいんだ」
「……ドリアンから聞いたんだな」
「そう。どういうものかと思って」
「仮にそれが本当だとして、嗅いでも分かるまい。あなたは魔道士だ。あなた自身、リリウムに触れているのだから」
「でも直接摂取してるわけじゃないから、テンプル騎士ほど強くはないそうだ」
「ちょ、ちょっと待て嗅がせたのか」
「うん」
「ドリアンに!?」
「うん」
「あ、あなたの匂いを!?」
「ついでにヘリズマにも嗅がれた。なにか問題あった?」
「いや私は…むしろあなたに問題あってほしいんだが…くっ、あのテヴィンターどうしてくれよう」
「それで、自分の匂いではよく分からないからカレンの匂いを嗅ぎたいんだ」
「だっ、駄目だ! どうせ私はリリウムを絶っているから匂いも消えている!」
「じゃあ余計に分かりやすいかも。バリスたちと比べてみよう」
「あ、あまり他人の体臭など嗅ぐべきじゃないと思う」
「……そんなに嫌なのか?」
「嫌というか、嫌ではないが、今はそういう時間ではないというか、いつならいいというわけでもなくてだな」
「ドリアンには嗅がせたくせに」
「嗅がせたんじゃない、嗅がれたんだ」
「私には嫌なんだ…」
「だからそういうことじゃないだろう!」
「風呂に入ってないのが気になるならジョゼフィーヌに用意してもらおう。入浴後ならいいんでしょう?」
「いやそれは余計に、別の意味でまずいような」
「今夜あなたの部屋に行くから」
「もう少し自分が何を言ってるか考えてくれ!」
「あなたがダメなら他のテンプル騎士の部屋に行く」
「夜に…入浴後に!?」
「……やっぱり私には嫌なんだ」
「違うというのに! ああもう分かった。だったら今…いや、少し待っててくれ。兵舎でひとっ風呂浴びてくる」
「えっ。なんかそう改まられると恥ずかしいな…変なことするみたいだ」
「もっと早く気づいてほしかったよ」