to be tall
思ってたんだが、この家のベッドは少し小さいな。狭いテントでも床に雑魚寝でも椅子に丸まっても平気で眠れる俺だから窮屈で嫌ってことはないんだが、王宮のでかいベッドに慣れすぎたようだ。まっすぐ寝ると足がつっかえるのがちょっと気になる。
そんなようなことを何も考えずにぼやいたら、エリッサからは氷のような視線が返ってきた。な、なんで?
「なにそれ。嫌味? 少しもつっかえない私への嫌味か?」
「え、えっ、いや、そんなんじゃないよ。昨夜は足伸ばしてもぶつけなかったのに変だなって思って。もしかしてまだ成長してるのかな?」
和ませようと冗談を言ったつもりだったんだがエリッサはなおのこと怒りを滾らせた。
「その日の体調や健康状態によって数ミリの変動は誰でもあるものだ。それくらいで背が伸びたとは言わない。調子に乗るな」
「はい」
全然調子に乗ってはいないんだけど、そんなに怒ることないだろ。どうも彼女は身長を気にしているようだがそこら一般の女より背は高い方だと思うし、逆に背が高すぎるのを気にするやつだっているんじゃないかというくらいだ。コンプレックスになるようなことは少しもない。
これは単なる想像だが、たぶんエリッサは自分の身長が低すぎると思ってるんじゃなく“俺の方が高い”のが気に入らないんじゃないかな。負けず嫌いにもほどがある。
すごい勢いで不機嫌になった彼女は俺の後ろに回り込むと頭の上にのしかかって呪いをかけ始めた。
「背が縮めー背が縮めー」
「重い重い、首がなくなっちゃうから」
「首なんかなくなってもいい!」
えっ、なんかすごい洒落にならないこと言われた。でも首の後ろに胸が当たってるのがちょっぴり嬉しい、なんて思ってしまうのが悲しくもある。
俺の頭に顎を乗せたまま、彼女は小さな声で「シェイルくらいになりたい」と呟いた。……そ、それはさすがにちょっと、どうなんだろう。もしかしたら負けず嫌いとかなんとか関係なくただ単純に、子供感覚で大きなものが好きなだけなのかもしれない。