見つけた


 たどり着いた場所は、ヤルキマンマングローブの根の部分に建てられた掘っ建て小屋のような場所だった。建付けの悪そうな扉は開かれている。きっと女性と子どもが、命からがら逃げ出した時のままなのだろう。
 サンジは扉を蹴り飛ばしたくなる気持ちを抑えて中に入る。そこは小さな物置小屋になっていた。樽や木箱が散乱する中、一箇所だけ何も置かれていない場所がある。
 埃を足で掻き分けるように歩き着くと、そこは地下へ続く扉だった。人ひとりしか通れないその場所を、ゾロを連れて降りていく。長物をつかうゾロにとって、狭い場所は不利なため、サンジが先頭を切って向かっていく。
 地下階段を降りると、一面コンクリートの空間が広がっていた。物置小屋と同じように、樽や木箱がそこら中に置いてあり、自然と動線をつくっている。サンジとゾロは警戒しながら進んでいく。
――胸糞悪い臭いだ。
 鼻につく青臭さと血液の臭いが気持ち悪すぎて、反吐が出そうだ。サンジはグッと堪えながら、この先にジェシカがいるのかと考える。途端に腹の底からふつふつと怒りが湧き上がってくる。
「ックソ」
 フィルターをギリギリと噛み締めた。何かしてないと、どうしようも無く怒りを当たり散らしてしまいそうだった。
「おい」
「……わかってるよ」
 ゾロに声を掛けられてギリギリの理性を保つ。すぐにでもジェシカを走って見つけだしたいのに。敵がいるかもしれない所で、それをするのは自殺行為でもある。
「この奥だな」
「ああ」
 ゾロの声に頷いた。サンジは一度大きく息を吸って吐き出す。脳内のモヤが晴れていく感覚がした。
 物が置かれている道すがら、臭いが濃くなっていく。この先が今までで一番臭いがきつい。
「……許せねぇ」
 サンジはいてもたってもいられず駆けだした。背中にゾロの声がかかった気がした。制止の言葉すらサンジを止めることは出来ない。だって、きっとこの先にはジェシカがいる。
 サンジは木箱や樽にぶつかりそうになりながらも、長い足を全力で動かして駆けて行く。ものに溢れて狭くなった道が開けていく。
「――ジェシカちゃんッ!!」
 そこにいたのは、手枷と足枷によって身動きが取れなくなっている、傷だらけのジェシカだった。

22,06.10



All of Me
望楼