自分自身の過去を話してから赤井さんは以前にも増して私の家に通うようになった。「通い妻」ならぬ「通い夫」である。家に来て別段何かをするわけでもナニかをするわけでもなく、ただくっついてお互いの体温を確かめているような感じだった。




「組織が取引をするらしい。」




「知っています、港の倉庫での取引ですよね。」




「あぁ。」




「どういった代物の取引かまだわかっていないんです、きっとそちらもそうだとは思いますが。」




「さすが、といったところか。」




「私は私で行動します、赤井さんの邪魔はしません。」




「手を引け、と言いたいんだが。」




「引きません、絶対に。」




抱きしめられると赤井さんの心臓の音が聞こえる、普段とは違い少し早い音に「私と同じだ」と感じて頬が緩む。赤井さんのタバコの匂いを感じながら目を瞑っていると「絶対に、死ぬな。」と今度は小さい声で、私にしか聴こえないような声でそれが降ってくる。




「赤井さんも、死なないでください。」




「あぁ。」




「もう、大切な人がいなくなるのは見たくないです。」




「俺はお前にとって大切な人という括りに入っていることが嬉しい。」




「え・・・はぁ!?」




「そういう意味で言ったのではないのか?」




「な、何言ってるんですか!?」




「照れるな、照れるな。」




「照れてません!赤井さん変態です!」





暗い部屋でパソコンの明かりだけが私を照らしている、もう見慣れた光景で、私の仕事スタイルだ。組織が何かの取引に港を選んだのはおそらく海外とのそれだからだろう。海外との取引でまず一番に疑うべき代物はドラッグ、そして日本では取り扱いのない薬品。




あの組織が合法の取引をするとは到底思えない。おそらくコナンくんが飲まされ哀ちゃんが自ら飲んだアポトキシン4567だかなんだかの薬品だろうか、あれは完成形を現しているとは思えない、そうなると哀ちゃんの作ったものから派生させていく必要がある、今回はそのための取引だろう、あと拳銃とかなんとか違法なもの扱いに入るのか。




ジョグからの情報によると取引が行われるのは1週間後、時間は夜、日付を跨いでからになるとのことだ。対人の情報であってあのジョグの情報だから間違いはないだろう。




私の目的は取引を潰し、ジンに復讐すること。




彼に復讐をすれば私はどこへなりとも消えよう。







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