安室さんと会うときはと言ってもほんの数回しか会ったことはないのだが、彼と会うときは必ずと言って良いほど奥側の席を取るようにしている、彼の話は周りに聴かせられるようなものじゃないとわかっているからだ、だからと言って自身の車に乗るように言わないのは彼なりの配慮なのだろう、ありがたい。




「単刀直入に聞きます、黒のことを知ってますね。」




黒とはおそらく組織のことだろう、安易すぎないかその例え。




「はい。」




「では、今度の取引の内容も知っていますね?」




「ちょっとはわかりますが確証がないのでなんとも。」




「そうですか、危ないので関わらないようにしていただきたいのですが。無理な相談みたいですね。」




「わかっていただけてるなら何よりです。」




「あなたを信頼してお話ししたいことがあります。」




安室透、バーボンは探り屋として組織で重宝されているということはわかってはいるが、それが公安警察としてのスパイ活動ということも知っている。もしかしたら赤井さんとのつながりを懸念して罠を仕掛けてきているという線もないとは言えない。




そうなると、彼が私に話してきた取引の内容、取引に出向く人物をそう簡単に赤井さんの手に渡してはいけないと言うことだろう。キッドに事件のこともあるし、勝手に動かれたら大変だ。




そうしなくても、動きそうだけれど。




安室さんが教えてくれた情報は二つ、一つは取引相手。海外の王手機材メーカーで裏では違法カジノやら何やら色々お遊びを働いている「D-AX」ディーアックスという会社、今回は社長様直々のご訪問とあってかなり大きな取引になるらしい、そして取引内容は組織側はキャッシュ、そしてD-AX側は違法薬品。




やはり私の読みは当たっていたようで灰原ちゃんが作っていたアポトキシン4678だかなんだかの製造に必要な薬品を海外より入手する算段らしい。




どうして今回その取引が日本で行われるのかと言うと、海外に比べて日本はそういった取引の取り締まりが緩く、警備も手薄。万年平和のこの国でそのような違法薬品を大量に取引しようなんて輩は想像もつかないからだという。




そして二つ目は取引人数。組織側はジン、ウォッカ、バーボン、キャンティ、コルンの5人。相手側も公平を期すために社長様、社長秘書、海外事業部3名の5人で仲良くご訪問されるらしい。


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