どうして今回こういった情報を私にくれたのかというと、お得意のプライバシー完全無視な方法で私とジョグの話を盗聴していたらしい、もちろん私に盗聴器の類は付いていない。つけられたのはジョグの方。ご本人に安室さんにお会いした感想を聞いたところ「あなたのような素敵な男性になら一度抱かれてみてもいいかもしれません。」とニコニコ笑顔でお話をしたりしたらしい。もちろんことには及んではいない。その時に盗聴器をつけられたのだろう。彼もまたGrandのお客様になってしまった。悲しい。




コナンくん、赤井さん、安室さんにあの店が知られた以上、あの店で事件が起きる日もそう遠くはないだろう。二人に今のうちに謝っておくことにしよう、事件の原因である二人をあの店に引き入れたのは誤解を恐れずにいうのならこの私なのだから。




安室さんから解放され、阿笠博士に頼みごとを終えて家路に着こうとしていた矢先、此の間赤井さんとカーチェイスさながらの激闘劇を見せたジンの車が目の前を走り去っていった。同じ車を持っている人だっているだろうとか、本当に運転しているのは奴らなのかとか、考える暇もなく私は博士の家に来るために乗ってきたバイクに跨りドイツの雨蛙を追った。




雨蛙を追っていると、雨が降り出した。雨は尚一層強くなり、私と雨蛙を遠ざけようとしていた。




大粒の雨が私と人の車の距離を離していくようだった、だがこんなことで引き下がるほど私は良い女としては育ってはいない。




家族の仇




私にはそれしか頭になかった。ジンの車らしき車を追っている。もし間違いならば謝ればいいだけの話だ、そう思っていた私は身の程知らずこの上ない馬鹿であると確信した時には時すでに遅し。彼らを追いかけて細い路地を抜けると車はそこで急に速度を上げた、そして山道に入り連続的に左右に曲がっていく、奴においつかなければならないと私もそれに付随する形でスピードを上げたが、相手にとってその行動こそが自分たちが尾行されていると確認する行為。




助手席のドアから何かが見える。




「あ・・・拳銃だ。」




また見えた、拳銃の銃口。真っ暗なそれが。




そこから放たれた銃弾に反応はしたものの少し遅くフルフェイスヘルメットの端を掠めるように過ぎていく。フルフェイスヘルメットの顔を覆っている部分はひび割れ砕け落ち、私はジンに顔を見られてしまった。




参道の途中、車は止まりそして私も止まる。雨蛙の中から出てきたのは紛れもなく黒の組織のジンであった。ジンといい酒は英語でGINと表記する、ローマ字読みだと「ギン」だ。名は体を表しているとはまさにこのことなのだろう。彼の長髪はまさしくその名にふさわしいほどに綺麗な銀色をしていた。




「ここ数ヶ月、俺たちを嗅ぎ回っていたのはお前か?」




「・・・。」




「答えねーか、まぁそうだろうな。」




「あなたはジンでしょう?」




「・・・よく知っているな、まぁ当然か。」




「長髪の黒い服を着た男性が私の家族を殺したの。」




「あ?」




「あなたなんでしょう?私の家族を殺したのは。」



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