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「なんのことだ?」
「4年前、私の家族を殺したのはあなたなんでしょう、って聞いているの。」
「記憶にねーな。」
「記憶にすら残らないようなくだらない人間だったから?」
拳銃をこちらに向けているジンの顔が、こちらを凝視して一瞬表情がピクっと動いたような気がした。そして何かを思い出したかのように不敵な笑みを私に向けている。
「まさか生きていたとはな。」
「しぶとく生きていたの、あなたを殺すために。」
「仲良くお話でもしてやれたらいいが、生憎俺はお前みたいな小娘と話している時間があるほど暇じゃねーんだよ。」
「じゃぁ、その暇を作ってよ。」
「残念だが、お前は趣味じゃねぇ。出直してくるんだな。」
彼が持っている拳銃から放たれた銃弾は私の体を掠っていく。銃弾から逃げようと足に力を込めた矢先、雨によりぬかるんだ土が私の体もろとも崖の下へと雪崩ていった。
「どうします、兄貴。」
「放っておけ、こんな人気のない山道じゃぁ助けも来ねぇ、じきにに死ぬだろう。」
体は重力に比例して崖の下へと転がってく、途中何度も木にぶつかったり岩にぶつかったり小枝が私の体に刺さるのがわかった、転げ落ちていく感覚から解放され目を開けると落ちてきた崖が私の体を隠すように大きくそびえ立っていた。
車が走り去る音がする、雨も強くなっているような気がする。体に当たる雨粒ですら痛い。雨蛙の方が天気を味方につけたのかなぁ。なんて考える余裕があるからどうにかなるとは思っていたものの、もしかしたら骨がどこか折れているかもしれない、なんて思いながらギシギシという腕を上げると。至る所を擦りむいているし、切っているし、今回こそ本当に死んでしまいそう。
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