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赤井秀一SIDE




誄は先刻、阿笠博士の家に行きボウヤの持っているのと同じメガネと時計をもらいその家を出たという。彼女に渡したメガネには発信機が付いて、それをボウヤのメガネで探せば居場所がわかるのではないかという。だが発信機の圏内に誄が入らなければ話にならない。




「車は米花の森に行ったって。」




「誰かが見ていたのか?」




「わからないけど、さっき非通知で博士の家に電話が。」




「電話?」




「誰だかはわからないんだけど、今はその情報を頼るしかない。」




「飛ばすぞ、捕まっていろ。」




車を飛ばして米花の森へ急ぐ。制限速度違反だと言われようが関係がない、今はそんなことにかまっている問題ではない。




「でも、なぜ誄は。奴らの車など知らないはずではないのか?」




「誄姉ちゃん全部知ってたんだ。」




「知ってた?」




「僕たちのことも知ってたように、黒ずくめの組織のことも知ってたんだ。元の世界で漫画を読んだって言ってたでしょ、組織について知らないわけがない。あいつらの車を知らないわけがないんだ。」




「彼女の演技に騙された、ということか。」




「名女優になれると思うよ。」




「彼女を助けたら、賞賛の拍手を送ろう。」




車は森へ入りしばらく進む、先ほどからボウヤがそのメガネを使い彼女の位置を探している。がなかなか見当たらない。




「場所が違うのか?」




「そうかもしれない。こっちに向かったって情報だけだし。」




車をいくら進めても彼女の反応はない。それどころか木々が一層に生い茂っていくだけで、本当に彼女がここに来たのかさえ怪しくなってくる。




「赤井さん、誄姉ちゃんを見つけた!もう少し右に進んだところ!」




「崖の下に落ちたのか。」




日が暮れ始めている、早く探さなければいくら春だからと言っても低体温などが起きてしまう。それよりも、奴らと対峙したのだから怪我をせずに無事でいる方が望み薄か。




「いたぞ!」




崖を覗き込むと先ほどからずっと鳴らしている彼女の携帯が彼女の場所を示してくれている。地面に横になって目を瞑っている誄に触れるが反応がない。体温も低下していて身体中傷だらけだ。




「赤井さん、早く病院に行こう。」




「あぁ。」




誄を車に乗せて急いで病院へと向かう。頼むから目を覚まさないなんてことの無いように願うしかなかった。

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