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ずっと長いこと夢を見ていたような気がする。
なんの夢かは覚えていないのだがとても幸せな夢で、私は兄と手を繋ぎ父と母の後を追って歩いている。二人は時折こちらを向き微笑んで、父が私に手を差し出す。兄と繋いでいる方とは反対の手で父と手を繋ぎ母は父と手を繋ぐ。




家族4人、血の繋がった、最も繋がりの深い4人で歩いている。




まるで水族館のような世界が広がる。トンネルに映し出された映像のように家族4人で過ごした時の風景が広がっている。私はそれを見て笑顔を浮かべ映像を指差して家族と会話をしている。




すると3人は私の手を離し、先に行ってしまう。私は3人を追いかけようとするけれどどれだけ走っても追いつけない。私は一人で映像の中心に立っている。




突如映し出された映像が炎とともに崩れ落ちていく。そして3人もまた同じように体を炎に包まれながら崩れ落ちてそこには3人の焼けた後の灰だけが炎に巻き上げられて宙を待っている。




泣いている私を見て気がついた。




この映像を、私は第三者の目で見ている。




一人取り残された私をもう一つの家族が眺めている。私の元いた世界の家族。だが彼らが私の近くに来ることは無い。私の前には大きな亀裂があり底が見え無い。私からそちらに向かうこともでき無いし彼らがこちらに来ることも無い。





私は、一人だ。


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