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コナンくんに携帯番号を教えてからというもの酷いぐらいに連絡が多い。お前は女子中学生かと言いたくなるぐらいだ。結局簡単な質疑応答がメインの連絡ではあるがこの間なんて「蜂谷のお姉ちゃんは文学を習ってるんだよね。ホームズ好き?」と電話をしている向こうの顔がいとも容易く想像できてしまうような声色で言われ、即「興味がない。」と言ってやった。その時の悲しそうな彼の声は今でも忘れていない。
コナンくんも赤井さんも本をたくさん読むようで、工藤宅には書斎があるほどだという。なんと羨ましいことだろう。私なんてこの家に引っ越す前に家では所持している本の数が膨大すぎて二階の床を少しだけ沈めてしまったぐらいだ。一階の人間から「なんか、天井が・・・」と言われなければ気がつかなかっただろう。築年数の関係もあり「老化が原因です」と言い切った私を大家さんは今でも快く思ってはいないだろう。
過去の反省も踏まえ、今住んでいるのはおそらくバブルの時代に作られた築年数はたっているものの全てがコンクリート造り、凹むはずのないマンションの二階の大きい部屋を借りている。
親に頼み込んでここにして貰った。わがままを言った分家族が死んでもここを離れられないのはそういったとかが理由でもあるし、唯一家族との思い出を感じられる場所でもあるからだろう。家族がいなくなり部屋も空いてしまったので書斎を拵えた。次の日が休日な夜はカフェオレ片手にその部屋で一夜を過ごすのが至福の時である。
そんな私の聖地に今土足で足を踏み入れている男が二人。
言わなくても分かって頂けるであろうか、男二人。小さくメガネをかけて小綺麗な格好をしている割にはいつまでたっても敬語を覚えないクソガキが一人。そしてニコニコと作り笑いを浮かべながらはハイネックを見せびらかしてくる男が一人。なんだってこいつら女の部屋に上がり込んで。
「お姉さんすごいね、本がたくさんあるよ。」
「タイトルからの予想ですが少し暗いお話が好きなのですか。」
「その前になんでお二人はここにいるんですか?」
「だって、この間電話した時に本の話をしたでしょ。その時お姉さんが「そんなに読みたいならうちに来ればいいでしょ。」って」
「私そんなこと言った?」
「うん、だから昴さんも連れてきたんだ。」
連れてきたんだっておかしいと思うのだが。
とりあえずリビングに移動させてコーヒーを入れる。コナンくんにジュースを入れると「僕もコーヒーでいいよ。」と頬を膨らませてきたので「ガキはジュースで十分です。」と答えてやった。
「で、なんで来たんですか?ただ本を読みに来たわけじゃないですよね、コナンくんに赤井さん。」
「私は沖矢昴ですよ。」
「・・・沖矢昴さん。」
「実は蜂谷のお姉ちゃんの調べて欲しいことがあるんだ。」
「調べて欲しいこと?」
「あまり巻き込みたくないって言ったそばからですが。」
「お姉ちゃんしか頼れる人がいないんだ。」
「・・・見返りは求めていいのかな?」
「全部が解決したら、なんでも。」
「なんでも、今なんでもって言いましたよね沖矢昴さん。」
「え、はい。」
「楽しみです、なんでもですね。」
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